太陽に口づけを〔S A〕 (ページ32)

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気付いていないのは自分ページ32

櫻「あー、じゃ早く行った方がいいよ。お疲れ様」

嫌味や皮肉を込めたようにでも悲しそうにでもなく、低めの声でごく普通に返した。

その瞬間、相葉くんは一瞬だけ顔を歪めた。

だけどすぐに、カンに触るほどの作り笑いを浮かべた。

相「お疲れ様っ！」

相葉くんは俺に向かって手を上げて見せた後、ガチャリと楽屋のドアを開けて出ていった。

その姿を、俺よりも大野さんの方が悲しげに見ていた。

相葉くんがいなくなった後の楽屋。

3人からの視線に潰されそうで息苦しい。

みんなの言いたいことは、なんとなく分かっている。

黙々と鞄の中の書類を無意味に整理しながら、わざと視線を避けていた。

松「翔さん」

俺の様子を黙って見ていられなくなったのか、松潤が気まずそうな顔で声を掛けてきた。

櫻「はい、何でしょうか」

松「このままでいいの？」

櫻「何がですかー？」

松「だから…その…」

言いづらそうに口をつぐむ松潤。

きっと、相葉くんのことを言ってんだろうけど、詳しい事情を知らない松潤とニノに、今更相葉くんとのことを打ち明けるつもりはなかった。

俺らの間に何か気まずいことがあったのは分かっていて、それを何とかしたいと思う気持ちは凄く伝わってくる。

だけどもう、いいんだよ。

もう…

ニ「相葉さん、なんか悲しそうな目してたね」

珍しくテーブルのイスに座っているニノが、スマホに視線を向けながら言ってきた。

櫻「そ？別に気のせいじゃね？」

ニ「そうかなぁ。俺はてっきり、翔ちゃんが止めてくれるのを待ってんのかと思ったよ」

櫻「………」

ニ「まあ、何を？って感じですけど」

今ので確信した。

ニ「人の気持ちって、なんでこう難しいんだろうねぇ～」

独り言のように呟くニノを、目を細めて見つめた。

ニノは気付いているんだ。

俺の気持ちに。

つうか、俺と相葉くんのすれ違う想いに。

…なんだよ、いつからだよ。

…つうことは、もしや松潤も気付いてる？

だから、やけに口を挟んでくるわけ？

だとしたら、俺バカじゃね？

自分の口からは言っていないはずなのにバレるほど、態度に出てたってことなんだからさ。

…出てたか。

自分でも、テレビの画面に映る自分を見て驚いたくらいだもんな。

何やってんだろ俺…

急激に自分が嫌になって、挨拶も何も言わずに、逃げるように楽屋を出た。