無言の訴え ページ31
収録が終わり、和やかな雰囲気で楽屋へと戻ってきた。
だけどそれは、他の3人がいるから。
実際、俺と相葉くんは直接会話を交わしてはいないし、間に誰かしらを挟んでいる。
そうでもしないと、和やかな雰囲気はすぐにでも崩れてしまうだろう。
目だって、ほとんど合わせない。
合う時は、たまたま。
そんな気まずさの消えない俺達の溝を埋めるかのように、3人が一生懸命間に入ってくれていて、申し訳ない気持ちになる。
これがある意味、嵐の連携プレーというか絆なんだろうな…。
楽屋に戻ってきて数分後。
いつもは忍びのように真っ先に消えていく大野さんは、準備は整っているのに、まだ帰る素振りを見せない。
その代わりに、相葉くんが先に楽屋を出ようとしている。
その姿を、イスに座っている大野さんが目で追っていた。
相「じゃあ、お先に〜！」
相葉くんは、わざとかってくらいに明るい口調で俺達に挨拶をした。
ニ「あー…お疲れ様」
松「…お疲れ」
ニノと松潤がすぐに挨拶を返すも、二人の言い方に、どこか躊躇いを感じた。
相「リーダー、今日はまだ帰らないのっ？」
大「…んあー…うん。あとちょっとしたら出る」
相「珍しい！(笑)じゃあ、お先に〜」
大「お疲れさま」
大野さんに笑顔で手を振る相葉くんが、最後にチラリと俺の方を見た。
相「…じゃあね、翔ちゃん。俺、今日あっちの家に直行だから、先行くね」
相葉くんのその言い方に、ドンっとカノジョの存在感を見せつけられたような気がした。
俺の気持ちを知ってて、わざわざそんなことを言ってくるなんて、随分と挑発的じゃねぇか…。
寂しさを通り越して、悔しさが込み上げる。
相「………」
相葉くんは俺の返事を待っているのか、黙ったまま俺を見ている。
櫻「………」
俺も黙ったまま見つめ返した。
俺らの沈黙の見つめ合いを、他の3人も見ているのが分かる。
静まる楽屋。
部屋に風は吹いていないけど、風が俺らの間を通り過ぎていくような感覚だ。
相葉くんが俺に向けた言葉。
相葉くんにしては珍しく嫌味な言葉だ。
よっぽど俺を挑発したいんだよな？
そう思って、半分睨み返してみたものの。
俺を見るその瞳が、挑発的な目じゃない。
むしろ、悲しげな目をしている。
なんで、そんな目で見んだよ…
「俺のことはもう諦めて」て言いてぇのかよ…
………それとも。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年6月23日 21時
