想いの軌跡 ページ28
その後始まった収録。
俺と相葉くんの間に漂う気まずさが、ニノと松潤にも伝わったのか、主に二人が間に入って、なんとかいつもの5人の雰囲気を保ってくれた。
事情を知っている大野さんも、黙って合わせてくれている。
メンバーのこういう所にホント救われるし、感謝している。
いつもは、どんなに遠くにいても目が合う俺ら。
だけど今日は、ほとんど目が合うことはない。
たまに同じタイミングでお互いを見てバチっと目が合っても、物凄い早さで目を逸らす。
だから俺は、一生懸命崖を登っていく相葉くんの背中だけを見つめていた。
相葉くんも、俺のことを想ってくれていたなんて…。
驚いた反面、どこかで「やっぱりな」と思う自分がいた。
それはきっと、相葉くんもだろう。
知らなかったと言いつつも、俺と同じように、どこかで「やっぱりね」と思う気持ちがあったんじゃないだろうか。
俺らはきっと、薄々気付いていたんだと思う。
お互いの気持ちに。
だけど確信が持てなくて、避けていたんだ。
俺らに『カノジョ』という存在がいなかった頃、よく一緒にご飯を食べに行っていた。
時々、俺の車で一緒にショッピングへ出掛けることもあった。
今でも思う。
あの時のあの時間は、なんて楽しかったのだろうて。
本当に仲良しだった。
それはもう、友情よりももっと深い仲だった。
どれほど一緒に笑っただろうか。
悩みも愚痴も、お互いに腹を割って何でも話していた。
数えきれないほど、スキンシップを取り合った。
そのうち、二人の時間が特別なモノになった。
相葉くんと一緒にいる時間が『幸せ』だと感じ始めた。
だけど、そう感じていたのは俺だけじゃなかったはず。
言葉に出さなくたって、通じ合っていたんだ。
自然と目を合わせて、微笑み合ってしまうくらいに。
そして俺は、相葉くんのことが好きなんだと自覚した。
だけど、その時は認めたくなかったんだ。
男の相葉くんを好きになってしまったことを。
怖かった。
その想いがバレた時、自分がどんな目で見られるのかが。
それは相葉くんの目じゃない。
周りの目、世間の目だった。
今まで苦労して作り上げてきた自分のイメージを壊すのが怖かったんだ。
だから俺は、逃げたんだ。
自分の気持ちから…
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年6月23日 21時
