逃した愛 ページ27
相葉くんからの告白に、自分の思考が追いつかない。
今のこの状況が、夢か現実なのかさえも分からなくなってきて…。
次から次へと零れ落ちる涙を、俺は黙って見ていることしか出来なかった。
相「…翔ちゃんにカノジョがいるってっ…事務所からの呼び出しで知った時っ…俺、ショックだったよっ…」
溢れ出る涙を親指で拭いながら、時折声を詰まらせて話し始めた。
相「翔ちゃんに大事な人がいるなんて知らなかったしっ…そんな事、一言も言ってくれなかったからっ…」
櫻「………」
相「諦めなきゃって思ってもっ…そう簡単には諦められなくてっ…」
櫻「………」
相「翔ちゃんを想って一人で過ごす夜が辛くて苦しくてっ…」
櫻「………」
相「だから俺もっ…カノジョ作らなきゃってっ…」
鼻をすすりながら、唇を噛み締める相葉くん。
泣きながらも一生懸命に打ち明けてくれた相葉くんの隠されていた想いに、俺も涙が出そうになった。
櫻「…嘘だろ……」
鼻がツンとするのを喉でグッと堪えながら、やっと発した言葉。
櫻「…なんだよ」
悔しさが込み上げてきた。
櫻「…俺ら、本当は両想いだったってことだろ…？」
俺の問い掛けに、相葉くんはゆっくりと目を閉じて、再び涙を溢れさせた。
俺らは、両想いだったんだ。
それなのに、歯車が噛み合わずに、結局お互い違う相手と付き合うことを選んだんだ。
その歯車を狂わせたのは、他の誰でもない。
俺だ。
相葉くんは手の甲で涙を拭うと、俺を避けて楽屋のドアの方へと向かっていった。
去っていこうとするその肩を、急いで掴んだ。
櫻「待って、相葉くん」
相「離してよ、翔ちゃん」
櫻「俺ら、今からじゃっ…」
相「もう遅いよ」
櫻「えっ…」
相「俺もう…翔ちゃんのことは諦めて、カノジョを大事にしようて決めたんだからっ…」
櫻「相葉くっ…」
相「今更もう…無理だよっ…」
そう言って勢いよく楽屋のドアを開けると、相葉くんは駆け足で出ていった。
追いかけようと一歩踏み出した時、ドアの陰からふっと人の気配を感じた。
櫻「あ…」
大「………」
そこには、スマホを手に持って気まずそうな顔をする大野さんが立っていた。
櫻「…聞こえてた？」
大「…ごめん」
櫻「…どうしたらいいと思う？」
大「……分かんないや」
櫻「…ですよね」
大「…頼りないリーダーで、ごめん」
何の罪もない大野さんに謝らせるなんて、俺は最低だ。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年6月23日 21時
