言葉に出せなかった想い ページ26
沈黙の空間で、俺らは何秒か見つめ合っていた。
だけどすぐに、相葉くんがハッと我に返ったように目を逸らした。
相「えっ…えっ？翔ちゃん、別れたの…？」
相葉くんが再び、俺に視線を向ける。
櫻「そうだよ」
相「なんで…？」
櫻「フラレた」
相「………」
櫻「別に引きずってねぇよ」
相「そんな…」
相葉くんが混乱したように、自分の膝に肘をついて、頭を抱えだした。
櫻「これで信じてもらえましたかっ？」
頭を抱える相葉くんに向かって、若干投げやりな口調で言い放った。
すると相葉くんが、僅かに頭を上げ、チラリと俺の方を見た。
相「…カノジョと別れたから、今度は俺にしようてこと？」
櫻「そうじゃねぇよ…」
相「だって、そうじゃん！だいたい、なんで急に俺なの！？」
櫻「急にじゃねぇよ。前からだよ」
相「えっ！？」
櫻「俺は…前から相葉くんのことが好きだったんだよ」
何度目かの告白に、相葉くんは今にも泣きそうな顔で、フラフラとソファから立ち上がった。
正面で向かい合った俺ら。
相葉くんは、泣くのを堪えるような表情で俺を見ている。
相「…いつから」
櫻「…だいぶ前からだよ」
相「だいぶ前って…」
櫻「少なくとも…カノジョと付き合う前から」
その瞬間、相葉くんの口が歪んだ。
相「何それっ…そんなの聞いてないよっ…」
櫻「言ってねぇもん」
相「なんで言ってくんなかったのさっ…！」
櫻「………」
相「もっと前に言ってくれてたらっ…俺っ…」
相葉くんが、震える唇を噛み締めた。
櫻「言ってくれてたら何？」
相「俺っ…喜んでオーケーしたのにっ…！」
櫻「えっ」
心臓が、棒のような物でツンと突かれたような衝撃だった。
相「俺だってっ…前からずっと、翔ちゃんのことが好きだったのにっ…」
正面にある顔が、歪んで赤みを帯び始めた。
櫻「…相葉くん……」
相「なのにさっ…どうしてっ…」
櫻「………」
相「どうして、カノジョと付き合ったりしたんだよぉっ…！！」
ドラマ以外で相葉くんが怒鳴る姿を見たのは初めてで、言葉が喉につっかかったように声が出なかった。
相「…何度も諦めようってっ…忘れようってっ…俺っ…」
バンビのような黒目がちの目から、ポロリと涙が零れ落ちた。
長い睫毛を伝う雫は、光を反射しながら落ちていく。
その涙は凄く綺麗なのに。
落ちて散ってしまった感情は、あまりにも悲しい色をしていた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年6月23日 21時
