画面の中の二人 ページ17
【櫻井翔】
週始めのニュース番組の仕事を終え、深夜に自宅へと帰ってきた。
年々、1週間が早く感じるようになっていく。
仕事ばかりの毎日。
いや…
仕事だけの毎日。
仕事をして、帰ってきて、一人で晩酌をして。
毎日これの繰り返し。
そりゃあ、たまには友達や後輩と飲みに行くことだってあるけど、基本のルーティンは家で一人で晩酌すること。
はたから見たら、寂しい男だと思う。
だけど、俺にはこの時間が必要で。
一日の疲れを癒しつつ、その日の自分をリセットするのに大切な時間だ。
ソファに腰掛け、冷えた缶ビールをぐびぐびと喉に流し込んだ。
櫻「ハァ〜〜」
この瞬間が最高に幸せ。
だけど、その幸せな気分なんて一瞬で散る。
夜の静けさに飲み込まれてしまう前にテレビをつけ、DVDデッキの電源を入れた。
録画した先週の嵐の番組を観ることにした。
拍手に包まれる賑やかなオープニング。
俺ら5人のトークを、画面の中の自分と一緒に笑いながら観ていた。
つまみを口に運び、再びビールの缶を口につけた。
缶で遮られた画面。
再び画面の映像が視界に広がった時。
缶をテーブルに置こうとした手を止めた。
画面の中の光景に、目を奪われたんだ。
それからずっと、エンディングまで見入っていた。
番組が終わって、ようやく残りの缶ビールをグイッと飲み干した。
カンッと音を立ててテーブルに置いた缶を、そのままグッと握り潰した。
込み上げる感情を、ビール缶に向けた。
知らなかった。
画面の中で見せている自分の姿を。
5人で話しているくせに、相葉くんにばかり話しかけている自分。
どんなに離れた所にいても、相葉くんへ視線を向けている自分。
相葉くんを、愛おしそうに見つめる自分。
こんなにも、自分の気持ちがダダ漏れになっていたなんて…。
だけど。
その自分の視線の先に、同じような表情を浮かべて自分を見つめ返す相葉くんがいた。
松潤を挟んで話す俺ら。
視線を合わせて楽しそうに笑い合う俺ら。
隣同士の席の時は、他の人よりも少し距離が近い俺ら。
画面に映る俺らは、まるでお互いを想い合っているかのように見えた。
画面の中の二人は、こんなにも仲が良いのに。
どうして本当の俺らは、別々なんだろうか。
あんなにも見つめ合っているのに、どうして俺の気持ちは一方通行なんだよ…
柄にも無く、目頭に浮かんだ涙を指で拭った。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年6月23日 21時
