おめでたくない ページ7
モヤモヤとした日々を過ごす中。
ついに事務所から、5人で呼び出された。
にのの結婚を認めると、事務所から正式に許可が出た。
その代わり、色んな条件はあるけども。
事務所からの報告を、ウチら5人は誰一人反論することも喜びの声を上げることもなく、最後まで黙って聞いていた。
事務所からの報告が終わり、部屋を出て5人で歩いているその雰囲気は、どこか気まずさがあった。
その気まずい雰囲気を最初に崩したのは。
櫻「ニノ、おめでとう。良かったじゃん」
ニ「あー…ありがとうございます」
松「これから大変だろうけどさ、一緒に頑張ろーぜ？」
ニ「すいません…ご迷惑お掛けしますが、よろしくお願いします」
相「いいって！俺ら、ニノが幸せになってくれることが一番だからさ！ねっ？」
櫻松「そうだよ」
ニ「…ホント、ありがとうございます」
にのは申し訳なさそうに、ウチら4人にペコッと頭を下げた。
にのが頭を上げた瞬間、バチっと目が合った。
だけど俺は、何て言っていいか分かんなくて、無言でウンと頷いた。
こういう時、温かい言葉を掛けてあげられるみんなが、すげぇなぁて思う。
正式に結婚が認められたんだから、「おめでとう」て言ってやるべきなのに。
どうしてもその5文字が言えない。
リーダーとして失格だと思うけど、これは俺自身の問題だ。
俺自身が、にのの結婚を認めてないからなんだ。
夜、家に帰って、物思いにふけってみた。
にのが・・ついに。
さっきから全然喉が進まないビールの缶のフチを、人差し指でクルクルとなぞった。
ああ・・にの・・
いっつも一緒に居た、にの。
いっつも隣で笑っていた、にの。
本番中に、ちょっかい出してきて。
本番中に、クスクスと二人で笑って。
だけど、いざとなるといつも俺をフォローしてくれて。
だから、にのが困ってる時や責められてる時は、誰よりも先に俺がフォローした。
そうやって助け合って、支え合ってきた。
夫婦みたいだって思うくらいだった。
そのにのが、他人(ひと)のモノになってしまう。
本当はおめでたいことのはずなのに。
全然嬉しくない。
正直、ヤだよ…。
認めたくない。
だけど…認めなきゃいけないんだよな…？
全然飲みたくない缶ビールを、グイッと一気に流し込んだ。
今日は酔い潰れるまで飲んでやる。
本当は欲していない酒を無理ヤリ流し込む今の自分の姿は、きっと誰が見ても痛々しいだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年9月10日 12時
