アイドルの宿命 ページ24
にのの婚約発表が世間に知れ渡り、世間は想像以上に騒ついたが、結婚を認める声や祝福の声も多く上がり、なんだかんだにのの結婚が世間で受け入れられ始めていた。
だけど、やっぱりファンの間では、あまり穏やかな空気ではなかった。
それでも過ぎていく毎日。
気付けば本格的に気温は下がり始め、景色も匂いも段々と冬へと近づいていた。
いつものように、レギュラー番組の収録前の楽屋で待機していると、松潤がスマホの電話で話しながら楽屋を出ていった。
俺は椅子に座ってスマホをいじっていると、今度は相葉ちゃんが立ち上がった。
相「ね、翔ちゃん！トイレ行こ？」
櫻「そうね、そろそろ行こっか」
相葉ちゃんの掛け声に翔くんが当たり前のようにスッと立ち上がり、仲良く一緒に楽屋を出ていった。
楽屋に残っているのは、俺とにの二人。
ニ「あの二人、仲良いよねぇ〜。いっつもでしょ？一緒にトイレ」
にのが話し掛けてきたから、スマホをいじる手を止めた。
大「仲良すぎだよ(笑)」
ニ「だったら付き合っちゃえばいいのにね。思うでしょ？」
大「………無理だよ(笑)」
にのからの突然の投げ掛けに、苦笑いで返した。
今までお互いに触れたことは無かったけど、やっぱ気付いてたんだなぁて思った。
翔くんと相葉ちゃんの関係。
もちろんただのメンバー同士で、付き合ってはいないけど、お互いに想い合っているのは、前からなんとなく気付いていた。
本人達は何も言わないけど。
でも、長年一緒にいる俺には分かるし、にのだって気付いている。
多分、松潤も。
でも、誰も何も言わない。
それが嵐だから。
暗黙の了解ってやつ。
俺達嵐は、メンバーそれぞれ表向きは週刊誌やらネットやらで色々言われているけど。
それぞれ本当のことはひた隠している。
俺達はメンバー同士ですら、恋愛に関してはあまり打ち明けないけど、俺は分かってるよ。
翔くんと相葉ちゃんが、表には出せない想いを静かに秘めていることも。
松潤にも大切な人がいることも。
マスコミにどんなデマを流されても、俺達はグッと堪えて黙って見過ごしている。
それが俺達アイドルの宿命なんだ。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年9月10日 12時
