ブラックな愛 ページ13
今度はちゃんと彼女に対する気持ちを教えてくれるのかと思ったら、まさかの発言に言葉も出なかった。
ニ「びっくりでしょ？俺ね、彼女に対して…そうでもないから」
大「………」
ショックを超えて、ガッカリするレベルだった。
ニ「今までさ、報道が出る度に色んなこと言われてきたけど、俺の彼女への気持ちを疑われたことは無かったんだよねぇ」
大「………」
ニ「周りの人達にも、事務所にも、メンバーにも。世間やファンの人達だって、受け入れるかは別として、俺の彼女に対する気持ち自体は、みんな普通に信じてると思うよ」
大「………」
ニ「彼女だって、俺を信じて疑わないからね」
得意げな表情を浮かべるにのが、突然無表情で俺を見ながら目を細めた。
ニ「だけど…あなたにだけは、俺の演技が通じなかったんだね」
俺を見るその目つき。
今ここにタバコがあったら、今すぐにでも吸い出しそうだ。
大「…演技って、なんだよ」
やっと出た声は、乾いた喉のせいでカスッカスだった。
ニ「俺が彼女を真剣に愛してるっていう演技かなぁ」
大「お前、それって…」
ニ「本当に俺が、彼女を愛してるから結婚するんだと思います？」
大「………」
ニ「なわけないじゃん」
ついこの間まで演じていたドラマのキャラのようなブラックさに、ゴクッと唾を飲み込んだ。
ニ「あー、でも彼女の持ってる条件は本当に好きだけどね？」
大「条件て…」
ニ「さっき言ったことね。その中で俺が一番愛してる条件が『女』てこと」
大「むちゃくちゃだよ…言ってること。んなもん、彼女に対する愛情なんて、全くねぇじゃん！」
ニ「そうだよ？」
大「どこが愛情深いんだよ！」
ニ「だから言ってるでしょ。俺の愛情は、彼女の為のものじゃないんだよ」
大「じゃ、誰なんだよ！誰に向けての愛情なんだよっ！」
ニ「俺ね…おーのさん」
大「あんだよ！」
ニ「子供が欲しいんだよね…」
大「ハァ！？」
ニ「なるべく…早く」
大「はぁん！？」
ニ「俺の母親がさ…ちょっと体調崩してさ」
大「えっ」
ニ「別に、今すぐどうこうってわけじゃないけど。ただ」
大「………」
ニ「孫の顔も見せられないまま、母ちゃんにもしものことがあったら…俺、一生後悔するなって」
にのは母親のことを思い浮かべているのか、悲しそうに睫毛を伏せた。
にの…お前…
それって、つまり・・・
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年9月10日 12時
