ARS's ｼｮｰﾄｽﾄｰﾘｰｽﾞ2017 (ページ43)

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ワン・モア・チャンス〔8〕ページ43

そんなギスギスした毎日を送っている俺らに。

運命の日が訪れた。

今日は俺らが付き合い始めてちょうど1年が経つ日。

外は土砂降りの雨が降っている。

俺は僅かな期待を込めて、一応休みを取っていた。

もしかしたら翔くんも休みを取っていて、一緒に出掛けるかもしれないと…。

俺の期待は、半分だけ叶った。

翔くんも休みを取っていたんだ。

だけど、出掛ける雰囲気ではなかった。

外が土砂降りのせいなのか、俺らの関係がギスギスしているからなのか…

結局、せっかくの記念日を半分以上無駄に過ごしていた。

ほんの少し雨が穏やかになった夕方、部屋にこもっていた翔くんが身支度を整えて出てきた。

翔「あんさ…ちょっと出てくるわ」

潤「は…」

翔「そんな遅くならないと思うから」

そう言って俺に背を向けて玄関へと向かう彼。

記念日に一人で出掛ける姿に、俺の怒りが頂点に達した。

潤「は⁉︎どこ行くつもりだよ‼︎」

翔「…別にいいだろ」

潤「は〜そう！こんな雨の中、会いに行くんだな？浮気相手に」

翔「は？」

潤「そーか、そーゆうことかよ！わざわざ記念日に浮気相手に会いに行くところを見せびらかそうて魂胆かよ！！」

翔「…何言ってんだよ」

潤「さすが頭の良い奴のやることはエグいよな！そんで俺から『別れよう』て言わせようてことなんだろっ！！」

翔「…潤、やめろよ」

潤「だったらお望みどおり言ってやるよっ！！もう俺ら別れようぜっ！！こんな関係を続けていくのはもう、沢山なんだよっ！！」

翔「潤っ！」

潤「もう…限界なんだよっ…！自分を好きでもない偽りの恋人と一緒にいるのは…。虚しくなってくるんだよっ…」

俺は玄関の収納棚から傘を取り出すと、ソレを翔くんにグッと押し付けた。

潤「頼むからもうっ…帰ってこないでくれっ…」

そう言って俺は、黙って俺を見つめる偽りの恋人を、雨が降る外へと追い出した。

すぐに鍵を閉めてリビングへと戻る。

再び強く降り出した雨の音に耳を塞ぐことも涙を流すこともせずに、ソファに寝転んでギュッと目蓋を閉じた。

龍の唸り声のような雷鳴が響く。

遠い所でこだまのように反響していた雷鳴がドカンッと激しく破壊音を立てたのは、彼が出ていってからしばらく経った頃だった。