ARS's ｼｮｰﾄｽﾄｰﾘｰｽﾞ2017 (ページ37)

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ワン・モア・チャンス〔2〕ページ37

静かな部屋でひとり、俺はソファに座ってホットのコーヒーを口へ運んだ。

ズズッとコーヒーをすする音だけが虚しく部屋に響く。

コーヒーの香りがする湯気を顔に浴びながら、物思いにふけっていた。

コトッと静かにコーヒーのカップをテーブルに置き、仕事が休みな俺はソファに横になった。

そして目を閉じて、思い出に浸った。

今までの、翔くんとの思い出に・・・

出会った時から翔くんは、いつもクールで物静かな人だった。

そして、頭が良いけど嫌味のない人。

騒いだりワーっとテンションが上がることはないけど、生真面目なわけでもなく冗談もちゃんと通じる人。

背丈は俺と同じくらいだけど華奢で腕だけは筋肉質。

色白でパッチリとした大きな目に、ふっくらとした唇の綺麗な顔立ち。

男の俺から見てもカッコイイと思うくらいのアイドル顔のイケメンだ。

そんな翔くんは口数が少なくてどこか儚い。

握り潰せばすぐに消えてしまいそうで守りたくなる。

けど、自分の想いをあまり口にしない男っぽさもある。

とにかく俺とは逆のタイプなのかもしれない。

俺はそんな翔くんに惹かれたんだ。

やっとの思いで告白した時は、シャワーを浴びたかのように大量の汗をかいていた。

そんな俺の様子を見た翔くんは、半分笑いを堪えながら

「よろしく」てひと言。

全く予想もしていなかったあっさりとした答えに拍子抜けした。

しかも『好き』とかそんな言葉もなく。

ただ『よろしく』て…。

その『よろしく』の意味を理解するのにあんなに時間が掛かったのは人生で初めてだった。

確認の為に

「それって…俺と付き合うってこと…？」

て、聞いたら

「そうだけど？」て…。

言葉が足りないと言うのか何なのか…(笑)

でも俺は。

そんな翔くんが好きなんだ。