そばにいたい〔16〕 ページ29
そんなことをぼーっと考えていたら、翔ちゃんの手が俺の腰に回ってきた。
櫻「どうした…？雅紀」
相「えっ…ううん、ちょっとぼーっとしちゃっただけ」
櫻「大丈夫？疲れてる？」
相「ううん、そんなことないよ…？」
櫻「雅紀、明日オフでしょ？」
相「うん…」
櫻「じゃあ…明日はゆっくり寝れんな」
そう言って、顔を近づけてきた。
素直に目を閉じると、唇が重なった。
触れては離れるソフトなキスを何回か繰り返したのち、舌を絡め合うような濃厚なキスに変わってソファに押し倒された。
翔ちゃんの手が、服の中に入ってくる。
その手の感覚にピクっと体が反応し、快感を逃す為に横を向いた。
そんな俺の首筋に翔ちゃんが顔を埋めようとした時。
翔ちゃんの動きが止まった。
櫻「雅紀…？」
相「………」
櫻「どうした…？」
相「えっ…」
櫻「なんで泣いてんだよ…？」
翔ちゃんに言われて初めて気が付いた。
俺の目から涙が伝っていた。
櫻「ゴメン…今日はそんな気分じゃなかった…？」
相「そんなことないっ…」
櫻「じゃあ…なんで泣いてんの？」
相「なんでだろうねっ…へへっ…」
震える声で笑いながら涙を拭ったら、翔ちゃんにゆっくりと抱き起こされた。
櫻「雅紀…何かあった？」
相「ないよ…何もないよっ…」
櫻「俺…何かしちゃったかな…？」
相「翔ちゃんはっ…何もしてないよ…」
櫻「俺…おまえのこと傷付けてる…？」
相「傷付けてなんかいないっ…俺が悪いのっ…」
櫻「俺が悪いって…どういうこと？」
相「俺っ…気付いちゃったっ…」
櫻「…何に…？」
相「俺ねっ…」
櫻「うん…」
相「俺…ずっとずっと…翔ちゃんが好きだったっ…」
櫻「…うん」
相「でもっ…翔ちゃんはニノと付き合ってたっ…」
櫻「…うん」
相「失恋して…俺すごく辛かったっ…」
櫻「…うん」
相「だけど…失恋した俺をねっ…ずっと支えてくれてた人がいたんだよねっ…」
櫻「………」
相「ずっとっ…俺のそばにいてくれた人がいたんだよっ…」
櫻「雅紀…」
相「俺ねっ…俺っ…」
櫻「………」
相「その人のことがっ…好きみたいっ…」
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2023年1月25日 20時
