いつか必ず巡り逢う〔2〕 ページ2
夜の8時過ぎに会社を出て、おれは真っ直ぐにそこへ向かった。
ガラガラと古そうな引き戸を開けると、よく見る中年のサラリーマン達がぽつぽつと席に座って食べている。
昔ながらの狭い中華屋さん。
壁沿いにテーブル席が4卓とカウンター席が8席。
カウンター席は横並びに7席とカーブを曲がった所に1席だけある。
端っこだし隣に人が居ないから、おれは必ずそこの席に座る。
いつものようにそこに座ると、コトッと水の入ったコップが置かれた。
いつものように店長が自らカウンター越しに水をくれる。
「よっ！カズくん、お疲れさまっ♪いつものやつでいい？」
カズ「うん」
おれが注文する料理はいつも決まっているから、たったそれだけの会話で済んでしまう。
忙しそうに調理に取り掛かる店長を、おれはカウンター越しに眺めた。
元気でいつも明るくて笑顔がキラキラしているこの男。
癖のない端正な顔立ちで普通にカッコイイ。
王子様系とかではないけど、普通にイケメンの部類だと思う。
そんな店長はおれの1歳年上で31。
中華屋さんの店長にしては若い方だけど、親の跡を継いだとか何とか色々あって、31で中華屋の店長をしている。
おれはたまたま会社の先輩に美味い中華屋があると連れて来られてこのお店を知った。
初めて食べたここのチャーハンがすぅげぇ美味くてすぐに気に入った。
それからおれはしょっちゅう通うようになり、お昼ではなく会社の帰りに1人で寄るようになった。
多い時には週4くらいで通って、いっつも同じチャーハンを頼むもんだから店長に顔を覚えられた。
今ではすっかり常連客で『カズくん』と呼ばれるようになった。
おれは店長のことを『マサさん』て呼んでいる。
フルネームは知らないけど、スタッフにそう呼ばれていたから。
おれもフルネームは教えていないけど、前に店を出る時に忘れ物をして・・・
「あっ！待ってっ…いつものキミっ！」
て、呼び止められて
「…えっ？おれ？」
「そうっ！！」
「おれ『いつものキミ』て名前じゃないんすけど」
「だって、名前分かんないからっ！(笑)」
「……カズ」
「えっ？」
「カズでいいよ」
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2023年1月25日 20時
