リスタート ページ50
朝起きたら、窓の外は曇天だった。
今にも雨が降りそうで、まるで俺の心模様みたいだ。
朝食後、制服に着替える為に部屋へ戻ってきた俺は。
さらしを持って、兄貴の部屋を開けた。
まだ寝巻きのままの兄貴が、ベッドでグダグダしている。
ニ「ねぇ」
智「んぁ〜？」
ニ「コレ巻いてくれないかな？」
兄貴に向かって、さらしを突き出した。
智「なんじゃこりゃ」
ニ「…さらしだよ」
智「なんでそんなもん巻くの？(笑)」
ケラケラと笑う姿を見て、グッとさらしを握りしめた。
ニ「…ウソ、冗談。それより準備しなくていいの？」
智「今日の授業かったるいから行かなくていいやぁ」
ニ「…ふぅん。いいね、大学生は自由で」
智「暇だし、そろそろバイトでもすっかなぁ〜」
ふぁ〜とあくびをする兄貴。
俺は、下を向いてフッと笑った。
そうだよね…。
きっと兄貴はもう、シャワー中に乱入してくることも無いのだろう。
いいんだ。
これで…
眠たそうな顔をしている兄貴を見つめた。
いいよ。
今日からは俺がシャワー中に乱入してやるから。
大丈夫…。
俺とあなたならきっと、一からスタートしてもまた同じように仲良くなれるよね…？
お兄ちゃん…
部屋に戻って、素肌の上にワイシャツを着た。
準備が整った俺は、スマホから犬のストラップを外して机の引き出しを開けた。
キラリと光る紫色のガラス玉。
その隣にストラップを置いて、そっと引き出しを閉めた。
今は雨は降っていないけど、午後から降ってくると言うから、電車で行くことにした。
傘を持ってガチャッと玄関のドアを開けた。
ニ「…潤…くん……」
真剣な表情をした彼が門の前で立っていた。
ニ「なんでっ…朝練は…」
松「グラウンドなら10周でも20周でもしてやるよ」
ニ「………」
松「なぁ、ニノ」
潤くんが門をグッと掴んだ。
松「お前は男に戻ったら、俺への気持ちは消えちまったのかよ？」
ニ「えっ」
なんで覚えて……
もしかして、あの妖精・・・
バカっっ…
松「いいか、よく聞けよ」
潤くんっ…
松「俺はお前が女だろうと男だろうと関係ねぇ」
ニ「っ…」
松「二宮和也が好きだ」
グッと喉の奥が重くなって、急いで駆け寄ってギイと門を開けた。
ニ「俺もっ…松本潤が好きっっ…」
どんよりとした空から薄日が差した。
門の前で抱き合う俺達に。
性別なんて関係ない。
−完−
終わり
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
