夢じゃない夢 ページ48
膨らんでいた自分のおっパイが、薄い胸板に変わっている。
なんでっ・・・
慌てて起き上がって、バッと自分の下半身に目を向けた。
ついてる・・・
自分の姿に呆然とした。
自分の体が男に戻っていた。
訳が分からないのとショックで自分の体をベタベタと触っていると、隣で眠っていた潤くんが「う〜ん…」と目をこすりだした。
松「ニノ…？」
ニ「潤くんっ…」
松「あれっ…？」
半分寝ぼけていた意識がクリアになったのか、俺を見る目がくっきりと開いた。
その様子からして、彼の目にも男の姿が映ったのだろう。
俺と同じようにバッと体を起こした。
松「えっ！」
驚いた顔で俺を見る彼。
今の状況が理解出来なくて、自分はずっとこのベッドで長い夢を見ていたんじゃないかとさえ思った。
だけど、自分の脚の間を見て、今までのは夢じゃなかったのだと思い知らされた。
シーツに血が付いている。
それを潤くんと二人して呆然と眺めた。
確かに俺達は結ばれたんだ。
だけど…
俺は布団を被るようにしてベッドに倒れ込んだ。
彼に背中を向けて。
松「ニノ…」
ニ「…見ないで…っ」
松「え…？」
ニ「…見ないで、潤くんっっ…」
松「………」
男に戻ってしまった姿を見られたくなかったんだ。
すっかり暗くなった空の下で、俺はひとりで公園のブランコにポツンと座っている。
潤くんに借りた男用のTシャツとハーパンの姿で。
自分の手にぶら下がっている中の見えないビニール袋には、さっきまで自分が身に付けていた衣服が入っている。
さすがにもう着れないから。
家まで送ると言う彼の申し出を頑なに断って。
何か言おうとする彼から逃げるように去ってきた。
何も言わせたくなかった。
悲しくなるのが分かるから。
ふと月が浮かぶ空を見上げたら、すぐそばに人影を感じた。
それは、月明かりの下でも分かるくらい、うるさい緑の服だった。
あ「にのちゃん…」
ものすごく申し訳なさそうな顔をしている男。
でも、今の俺には怒りの感情さえ湧かなかった。
ニ「…もうちょっとタイミング考えろよなぁ…魔法解くの」
あ「…違うの、にのちゃん…俺が解いたんじゃなくてね…」
ニ「え？」
あ「…あれは、好きな人と結ばれたら解けちゃう魔法だったみたい…」
好きな人と結ばれたら…
自分で夢を覚ましてしまったのだと気付いて、魂が抜けるように力が抜けてしまった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
