姫が選んだ王子様�� ページ45
ザザーッと波の音が響く。
ゆっくりと唇を離したら、潤くんが驚いたような顔で俺を見ていた。
ニ「俺…潤くんが好き」
彼の目を、真っ直ぐに見つめて言った。
俺にとって、学校で唯一の親友。
尖っているようで、実はすごく優しくて。
俺が女の子になってから、ずっと一緒にいてくれた。
いつもそばで俺を守ってくれた。
子供っぽい所もあるけど、すごく頼りになる人。
男らしくて、カッコイイ王子様。
そんな貴方に、俺はいつの間にか惚れてしまったんだ。
ドキドキとさせながら彼の反応を待っていると、目の前でガシガシと頭を掻き始めた。
松「…先に言わせろっつーんだよ」
ニ「え？」
不満気な顔で俺を見る彼。
もしかして…
松「ったく、女としてまだまだだな？(笑)」
フンと笑いながら憎まれ口を叩くもんだから、むぅ！と頬を膨らませた。
松「あれあれ？お顔がブスになってますよ？姫♪」
ニ「ふんッ！どーせ元からブスですよッ！」
プイッと顔を背けると、クククと笑う彼が、俺の顔に手を添えて正面に向けさせた。
ほんの少し伏し目で俺を見る潤くんと、目が合った。
松「ニノ」
ニ「………」
松「お前が好きだ」
真剣な表情で言われて、唇をキュッと結んだ。
松「後で冗談だったとかナシだからな？」
うん…と頷いた。
松「悪いが、俺はお前に本気だからな？」
強い眼差しを見つめ返しながら、コクンと頷いた。
彼の指が、風で顔にかかる俺の前髪をそっとかき分ける。
その手が首に添えられて。
目を細める彼の顔がゆっくりと近づいて。
俺もそっと目を閉じた。
二人の唇が重なる。
波の音を聞きながら、重なる俺達の影を想像した。
やがて、静かに唇を離し。
俺達は目を合わせて照れ笑いを浮かべた。
すごく幸せな気持ちでいっぱいになった。
スッと俺に差し出された手。
その手を取ったら、そっと握り返された。
俺達は指を絡めるように手を繋いで砂浜を歩き出した。
太陽が水平線に近づいた頃。
松「この後、どうする？」
手を繋いだままの彼に訊かれて、俺は握る手に力を込めた。
ニ「…久しぶりに潤くん家に行きたいな…」
波の音にかき消されそうな声で言うと、潤くんがソワソワと髪をいじりだした。
松「…言っておくけど…家、誰もいねーぞ…？」
緊張した面持ちで言う彼。
その言葉の意味を理解して、俺は黙ったまま頷いた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
