姫が選んだ王子様�� ページ43
日曜日。
智「あれ？かず。どっか出掛けるの？」
洗面所で髪型のチェックをしていたところを、兄貴に見つかって声をかけられた。
今日、親父とお母さんは、大学時代の共通の友人の結婚式で、早い時間に家を出ていった。
午前中はサッカー部の練習がある潤くんとは、午後から会うことになっている。
ニ「あ、うん…ちょっとね」
智「ほぇ〜珍しい」
おちょぼ口になる兄貴。
この人に今更隠すのもな…と思って、鏡越しでなく、直接目を合わせた。
ニ「実はね…今日、潤くんと会うんだ」
兄貴の目をしっかりと見て打ち明けた。
すると、正面にある眉毛がふっと上がった。
智「ああ、そういうことかぁ」
ポンと手を叩いて納得したように言う姿に、少し胸が痛んだ。
智「かず、その格好で行くの？」
ニ「えっ、うん…変かな？」
今日は天気も良くて暑くなりそうだからと、黒のTシャツにカーキのカーゴパンツてラフな格好にしちゃったんだけど…。
智「ダメだ」
ニ「ええッ！」
智「アレ着ていきな」
ニ「アレ…？」
只今、部屋で苦戦中。
さっきから何度やってもブラジャーのホックが留められない。
智「かず、出来た？」
ニ「ぎゃああ！」
中途半端な状態の時に兄貴が部屋に入ってきて、無意識に胸を隠した。
智「留めようか？」
ニ「お願いします…(泣)」
スッと俺の背中に回ると、慣れたようにホックを留めてくれた。
智「んふ、いいなコレ」
下着姿の俺を、舐めるように見る兄貴。
セットアップの、白地にピンクの花柄の刺繍とレースのついた下着。
その上に、黄色の細身のTシャツを着て白のショートパンツを履いた。
兄貴にコレを着ていけと言われて着替えたんだ…。
ニ「どう…かな…？」
兄貴の方を向いて、改めて自分の姿を見せた。
智「可愛いよ」
頭をポンとされて、照れて下を向いた。
智「あ、そうだ。ちっと手ぇ出してみ？」
ニ「え？」
手の平を上に向けて出したら、カサッと手の上に何かを置かれた。
何だろうと思って見てみたら。
紫色のパッケージの、避妊具。
ニ「ちょっ‼」
智「誕生日プレゼント」
ニ「はぁ！？」
智「ちゃんと避妊しな？」
ニ「ばかぁ！！」
俺にバシッと肩を叩かれながら兄貴がうへへと笑う。
でも。
智「かず。楽しんできな」
急に穏やかな顔で真面目に言うから。
ニ「…うん…ありがとう…お兄ちゃん…」
俺も真面目に言ったんだ。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
