伝えたい�� ページ40
射るような目つきで俺を見る潤くん。
その目に萎縮しちゃって、言葉が喉に詰まったように声が出せない。
どうしよう…
ちゃんと伝えたいのに…
松「何をそんなに怒ってんだか知らねーけど、そんなに俺がムカつくのかよ？」
黙ったままの俺に、潤くんが容赦なく攻めてくる。
松「もしかして、兄貴を取られただとか勝手に勘違いして頭にきてんのかよ？フッ、だったら安心しろよ。別にお前からお兄さんを奪おうなんて思ってねーから。邪魔者は消えてやるぜ？」
フンと皮肉な笑い方をする彼の目が、一切笑っていない。
違うの潤くんっ…
松「俺のことが嫌いだっつーなら、ハッキリ言えよッッ！」
廊下に彼の怒鳴る声が響いて、周囲のガヤガヤと騒がしい会話がピタッと止まった。
違うんだって潤くんっ…
俺っ…
頭の中で、昨夜のことが蘇る。
嵐の音も耳に入らない静寂の中。
いよいよ兄貴と繋がろうとした時だった。
俺達の顔が近づいた瞬間。
停電で灯りのないはずの暗い部屋を、小さな明かりが照らした。
とっさにその明かりの方へ顔を向けると、ベッドの下に捨てられた俺のスマホが光っていた。
二階に上がる前にマナーモードにしていたから着信音は鳴っていないけど、俺のスマホが着信を知らせていた。
ベッドに寝たまま覗き込んだら。
俺のスマホの画面には『松本潤』と表示されていた。
俺はその文字から背くように、反対側を向いた。
智「かず」
ニ「…ごめん、雰囲気壊しちゃって」
智「………」
ニ「…大丈夫だから…きて…？」
兄貴の顔を見上げた瞬間、光がふっと消えた。
着信が切れたんだ。
再び訪れる暗闇。
兄貴の首に回した腕にグッと力を入れた。
暗闇で俺達の体が繋がる瞬間を待っていたのだけど。
兄貴の腕が俺の脇の下を通り、そのままグイッと抱き起こされた。
ニ「え…兄貴…？」
智「…かず」
なんで？て思っていたら。
そっと親指で頬を拭われた。
気付いたら俺は。
泣いていたんだ。
ニ「…兄貴…俺…っ…」
智「…泣くな、かず」
ニ「…俺っ…おれっ…」
ポタッと涙がシーツの上に落ちた。
ニ「…おれっ…潤くんのことがっ…好きみたいっ…」
両手で顔を覆った。
こんな時になってやっと気付いた。
こんな時になるまで気付かなかった。
俺…
潤くんのことが好きなんだっ…
グスグスと音を立てながら顔を覆っていると、スッと兄貴の肩に頭を引き寄せられた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
