兄との禁断の…�� ページ36
閉じた目蓋にグッと力を入れながら、手の中にあるスマホを握り締めた。
ドクンドクンと心臓が音を立てる。
光のない視界で、兄貴の反応を待っていた。
すると、不意にふわっと背中が浮いた。
え？と驚いて目を開けた時には、兄貴に抱き起こされていた。
そして、ソファの上で優しく抱きしめられた。
柔らかい羽毛を包むように抱く兄貴の腕が優しくて…。
胸がジンワリと温かくなるような感覚に、また涙が出そうになった。
俺はしがみつくように、兄貴の背中に腕を回して胸に顔を埋めた。
再び外の荒れた音が響く。
その無言の時間が、更に心臓の動きを早くさせた。
智「部屋行こう、かず」
兄貴の腕の中で、囁くように言われた。
部屋に行くってことはつまり・・・
俺と兄貴の間に緊張感が漂う。
不安と緊張が同時に襲う。
でも…嫌だという気持ちは湧かなかった。
むしろ、期待で体を熱くさせる自分がいる。
“部屋行こう”
その意味を理解しながら。
俺は。
コクンと頷いた。
恥ずかしくてキュッと縮こまる俺を抱きしめる腕に、グッと力が入った。
兄貴の部屋のベッドの中で、俺を見下ろす兄貴と見つめ合った。
ニ「…兄貴…」
智「うん…？」
ニ「…俺達…いいのかな…」
智「責任は全部俺がとるよ」
穏やかな声で答える兄貴。
その声が俺の不安な気持ちをそっと払いのけてくれる。
だけど・・・
智「緊張する？」
停電したままの真っ暗な部屋の中でも、俺の緊張が伝わっていた。
ニ「…そりゃぁ…緊張するよ…」
俺に覆いかぶさる兄貴の服をキュッと掴んだ。
智「ふふ。大丈夫」
ニ「………」
智「優しくすっから」
酸素が多めの声で囁かれて、胸がキュウとした。
この人になら、身を委ねてもいいって思った。
この人となら、兄弟の一線を越えてもいいって本気で思った。
智「そうだ、かず」
ニ「うん…？」
智「今までキスって」
ニ「…無いよ。さっきのが初めて…」
兄貴の顔を見ながら、わざと被せ気味に答えた。
段々と暗闇に目が慣れてきていた。
智「そっか」
そう言って兄貴は、優しく、嬉しそうに微笑んだ。
その顔を見て、この人は多分、ずーっと俺を大事にしてくれるだろうなて思った。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
