ショック�� ページ28
またザーザーと梅雨の天気が続く日々。
やっと雨が止んだ水曜日の今日も、空がどんよりとしていて、朝見た天気予報では夕方から傘マークがついていた。
午後の授業も終わり、今日は珍しく潤くんと一緒に下駄箱で靴に履き替えて、駐輪場へそれぞれの自転車を迎えに行った。
今日はサッカー部の顧問である櫻井先生が出張で、潤くんは部活がお休みだ。
それを聞いて、学校の帰りにどこかへ寄らないかと誘ったのだけど。
今日は予定があるからと、お断りされてしまった。
考えてみたら、元々潤くんは俺なんかとは違って友達がいっぱいいる人だ。
それなのに、俺が女の子になってからは、いっつも俺と一緒に過ごしてくれていた。
部活が休みの学校帰りくらい、他の友達と過ごしたいよね…。
そう思って、自転車に乗って急いで学校の門を出ていこうとする潤くんを、俺は笑顔で見送った。
一人になった俺は、なんとなく真っ直ぐ家に帰る気にはなれなくて、久しぶりにあの廃ビルの屋上へ向かった。
一人で帰るのなんていつものことなのに、今日は無性に寂しい気分だった。
自転車を置いて、階段を上って。
息を切らしながら踏み入れた屋上。
前に見た時と空の景色が違う。
季節が変わった証拠だよね…。
俺は柵の方まで寄って、曇って遠くの山が見えない景色を眺めた。
あの、女の子になってしまった日から1ヶ月が過ぎた。
だけど、いまだに俺は女の子のまま。
いつ戻れるかも分からない。
あの緑の妖精め。
急に現れたと思ったらすぐ消えて。
全然男に戻してくれやしない。
自分でかけた魔法のくせに自分で解けないだなんて、なんてへっぽこな妖精なんだ。
冗談じゃないよ。
はぁ…
このまま魔法が解けなかったら、俺はどうなるんだろう…
俺は女の子として生きていくことになるのだろうか。
最悪それでも…
掴んでいた柵から手を離して、深く息を吐いた。
重そうな雲が広がる空がグズっている。
そういえば台風が近づいてるって言っていた。
そのうち雨が降ってくるだろう。
俺は鞄を持って、階段を下りていった。
家に帰る途中、コンビニに寄った。
漫画コーナーでほんの少しの立ち読みをしただけで、すぐに出た。
自転車に鍵を差して、さて帰ろうかと自転車に乗ろうとした時。
自転車を押して歩く制服姿の潤くんと。
私服姿の兄貴が一緒に歩いているのが目に映った。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
