誕生！我が家の天使たち�� ページ33
発表会が始まってからは、さっきまでの焦りが嘘のように、冷静に落ち着いて話すことが出来た。
ペコッと頭を下げる俺に盛大な拍手が送られ、どうやら発表会は良い形で終われたようだ。
あの部長ですら拍手をしている。
無事にやり遂げることが出来た安堵と共に、すぐに潤のことが頭に浮かんだ。
腕時計を見ると、発表会は約1時間半で終わり、ここから急いで病院へ向かえば30分で着く。
そうしたら、潤の出産の立会いに間に合うかもしれない。
社員達が片付けを始める中、俺は急いで相葉の元へ行き、「悪いけど、あと頼む！」と言って出口へ向かおうとした。
部「櫻井」
その俺の背後から呼び止めたのは部長だった。
翔「は、はいっ」
部「さっきのプロジェクトの件で詳しく聞きたいことがあるそうだ。ちょっと来い」
翔「ああ、いえ、部長っ…実は今、妻が出産の時で、すぐに病院へ行かないといけないんです！」
部「またそういうこと言ってんのか。それは後にしろ」
翔「いやいや、ダメなんですって！あ、コレ、プロジェクトの件で細かく書いてある資料なんで、部長の方から説明をお願いします」
鞄から分厚いファイルを取り出して、部長に差し出した。
部「何を言ってるんだ、お前が説明するんだよ」
翔「部長っ！お願いしますっ！」
頭を下げながらファイルを差し出しても、部長は一向に受け取らない。
部「櫻井、よく考えろ。今、嫁の出産よりも大事なものがあるだろう」
相変わらず融通の効かない部長の言葉に、今日こそは許すまいとギッと顔を上げた。
翔「部長っ」
相「今、奥さんの出産より大事なものなんて無いですよっ！！」
俺が反撃しようとしたところを、相葉がスッと俺の前に立って部長に言った。
相「先輩達の初めての子供が生まれる瞬間は、今しかないんですっ！！」
続けて相葉が、部長に強く言った。
相葉が入社した時からずっと相葉のことを見てきたけど、こんな風に上司に強く言ったのは初めてだった。
すると相葉が、俺の持っているファイルをスッと取った。
相「あとは俺達でなんとかしますから、先輩は潤くんのところへ行ってあげてください」
翔「相葉…」
相「こういう時の為に、俺だってちゃんと勉強したんで任せてください」
精悍な顔つきで言う相葉。
俺は唇をキュッと結んで、相葉の腕をポンポンとしてから出口へと向かった。
誰よりも可愛いがってきた後輩の頼もしい姿が、嬉しくてしょうがなかった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2019年2月5日 16時
