誕生！我が家の天使たち�� ページ31
タクシーに乗って、潤と一緒に病院へ着いたものの。
潤の陣痛の様子からして、まだまだ時間が掛かるねと言われた。
とりあえず潤は、そのまま入院することになった。
病室のベッドで横になる潤のそばに座って、腰をさすったり、マッサージをしたりしてずっと付き添っていた。
そうこうしているうちに朝になったが、もしかしたら生まれるのは翌日かもしれないと言われ、潤と話し合った結果、俺は仕事に行く為に家に帰ることにした。
今日の午後から控えている大事なプロジェクト発表会の為に、潤が俺に帰ってと言った。
大事な仕事でしょ？て。
翔くんがいなきゃダメでしょ？て。
ちゃんと成功させてね、翔くん！て。
潤の言葉にジーンとしながら、俺はウンと頷いた。
翔「潤…じゃあ、俺帰るけど、荷物はそのバッグに全部入ってるから。多分大丈夫なはず」
潤が鞄の中を覗くと、何やらゴソゴソとしだした。
潤「翔くん…なんでバナナが入ってんの！？(笑)」
翔「えっ！俺、そんなん入れたっ！？」
潤「なんか入ってますけど(笑)」
翔「マジでぇ！？」
どんだけ焦ってたんだよ！
俺の珍プレーに、潤がバナナを持ったまま肩を震わせてクククと笑っている。
潤「じゃあ、心細くなったらこれ見て頑張るから」
穏やかな表情で言う潤。
完全にやらかしたと思ったけど、まさか潤の心の支えになるとは思っていなかった。
こうなったら潤を支えてくれよ、バナナ！
バナナに潤を託して、俺は病院を出た。
家に帰ってスーツに着替え、すぐに会社へと向かった。
出勤してすぐに、相葉には事情を話した。
相葉は俺のことを心配しつつ、「きっと先輩が駆けつけるまで間に合いますよ！」と励ましてくれた。
そんな相葉に元気とやる気を貰って、午後の発表会の準備に取り掛かった。
早めに昼食を済ませ、発表会に出る社員全員で会場へと移動した。
会場の準備も順調に進み、だいぶ客席に人が埋まってきたのをチラ見しながら、壇上のマイクを調整している時だった。
スーツの内ポケットに入っているスマホが振動した。
ドキッとしてスマホを取り出すと、病院からの着信だった。
まさか…と、心臓をバクバクさせながら、人のいない所へ素早く移動し、手を当てながら小声で電話に出た。
案の定、俺に伝えられたのは。
「あと2時間ほどで分娩室へ移動します」
あともう10分程で始まる発表会。
俺は絶望感で、手で顔を覆った。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2019年2月5日 16時
