夫婦を乱すもの�� ページ23
「ただいま」も言わずに静かに靴を脱いで上がっていくと、リビングには、ソファに横になっている潤と。
その潤のそばに座る男の人がいた。
潤「あっ、翔くん、おかえり」
翔「……ただいま」
小「あ、どうも。お邪魔してます」
そう言って俺にペコッと頭を下げたのは、この間ショッピングモールで会った潤の友達の小栗くんだった。
翔「……どうも」
一応俺もペコッと頭を下げた。
本当は、「なんでキミがいるんだ」と言いたいところだけど、それはグッと飲み込んだ。
翔「潤、大丈夫？」
潤「ごめんね、心配かけて…。特に心配はいらないみたい。とりあえず今日は安静にしててって」
翔「そっか…良かった」
ふぅ…と胸をなでおろすと、潤が起き上がってソファに座り直した。
小「ホント良かったよ。潤から電話がかかってきた時、マジで焦ったよ」
翔「え？」
潤のそばで床にあぐらをかいて座っている小栗くんがさり気なく話に入ってきた。
潤「翔くんとの電話が終わった後、旬に電話してさ。やっぱちょっと心細かったのと、確か今日休みだったなぁて思ってさ」
翔「…そうなんだ」
小「潤から状況を聞いて、これはすぐに駆けつけてやらなきゃって思って、急いで車で潤の職場に迎えに行ったんスよ」
翔「…そうだったんだ」
小栗くんの言葉が、チクリと俺の胸を刺す。
潤「いやマジで、旬が来てくれて助かったよ」
小「別にこんくらい。言ってくれれば、いつでも駆けつけるよ？」
潤「ありがとう！お前はほんとイイ奴だ！」
厚い友情を見せつけるように話す二人。
その姿に、俺の胃の辺りがムカムカとし始めた。
潤「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
そう言ってソファからヨロヨロと立ち上がろうとする潤を、俺よりも先に小栗くんが支えた。
潤「ありがと、大丈夫だよ」
穏やかな笑顔を小栗くんに向けて、潤はトコトコとトイレの方へ向かっていった。
パタンとトイレのドアが閉まる音がしたと同時に、小栗くんが突っ立っている俺の方をチラッと見た。
小「大阪に出張だったみたいですね」
小栗くんが冷めた目で俺を見ながら小声で話し始めた。
翔「ああ…うん。ごめんね、潤の送り迎えしてくれてありがとね？助かったよ」
一応お礼を言うと、彼はあぐらから片膝を立てて座り直し、その膝の上に肘を乗せた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2019年2月5日 16時
