夫婦を乱すもの�� ページ20
その男が深く被っているキャップをパサッと取ると、潤が「あっ」という顔をした。
潤「旬！」
驚いたような顔をする潤が、その男の名前を呼んだ。
「あ、やっぱ潤じゃん」
潤「旬、お前今までどこ行ってたんだよ！」
お互いに名前で呼び合う二人。
なになに、誰？
「ずっと海外に行ってて、先月日本に戻ってきたんだよ」
潤「なんで連絡よこさねーんだよ！急に音信不通になるから、ずっと心配してたんだぞ！」
「ごめんごめん。あっちで携帯ぶっ壊れて、メモリーも全部消えちゃって、ホント最悪だったんだよ」
会って早々、仲の良さそうな喧嘩を始める二人。
あのぉ…
ポリポリと人差し指でこめかみ辺りを掻いていると、俺の様子に気付いた二人が同時にこっちを見た。
翔「…えーと」
潤「あ、ごめんね翔くん。俺の友達の、小栗旬」
そう言って俺を見ながら、彼を指差した。
小「どうも。小栗です」
俺に向かってペコッと頭を下げる彼。
俺も軽く会釈をした。
潤「旬。俺の旦那さん」
そう言って今度は、彼を見ながらを俺を指した。
翔「どうも、はじめまして。潤の夫の、櫻井翔と申します」
ペコッと軽く頭を下げ、素早く顔を上げると彼が驚いたような顔をしていた。
小「え…旦那？潤の？」
潤「そうだよ。俺、結婚したんだよ」
小「結婚？潤が？え、この人と？」
潤「そうだよ。音信不通だから連絡も出来なかったじゃねーかよ！」
ポスッと潤が彼の脇腹を軽くパンチするも、小栗くんという人は何の反応もせず、ジッと俺の顔を見つめている。
小「お前、男には興味ないっつったのに」
潤「昔はそうだったよ？でも、翔くんと出会って変わったっていうか、初めて男の人を好きになったよ」
小「つか、お前お腹どうしたの？」
潤「いや、だから、今妊娠中なんすよ(笑)それぐらい分かるだろ(笑)」
小「うっそ、マジ！？」
笑っている潤とは裏腹に、愕然とした表情を浮かべる彼。
なんだか気まずくて、一旦席を外そうと考えた。
翔「潤。俺ちょっと水でも買ってくるから、二人で話してて？」
潤「ごめんね、翔くん。ありがとう」
彼に軽く会釈をして、その場を離れた。
わざと遠くにある自動販売機まで行って時間を稼ぎ、ペットボトルのミネラルウォーターを持ってゆっくりと戻ってくると、ベンチには潤の姿はなく、代わりに小栗くんが座っていた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2019年2月5日 16時
