パピヨン～青い蝶～ (ページ5)

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その羽根を捕まえたい⑤ ページ5

大野はキョトンとした顔をしながら、人差し指でポリポリと頭を掻いている。

この顔は、本当に「あれぇ？」て顔だ。

どうやら、マジで俺に話したと思っていたらしい。

大野が本気でダンサーを目指していたなんて、知らなかった。

高校の時、そんな話をされた覚えもないし、相談された覚えもない。

忘れたとかそんなんじゃない。

もしも話してくれていたのなら、絶対に忘れるわけがない。

知っていたのなら、全力で応援していただろうから。

ニ「なんだよ…そんな話聞いてないよ」

大「マジか。ごめん、言ったつもりだった」

てへっ♪て感じで笑う大野。

こいつの場合、隠してたとかじゃなくて、マジで勝手に言ったつもりだったんだろうね。

高校の時から、そういうことがよくあった。

俺が風邪で休んだ次の日に登校したら、「今日の時間割、変更になったって言ってなかったっけ？」とか。

待ち合わせしたはずの時間に来なくて待ちぼうけしていたら、次の日「遊べなくなったって言ってなかったっけ？」とか。

そうだ、こいつはそういう奴だった…

ようやく大野から、卒業してから今に至るまで、ダンスの道を歩む為に色んな場所へ行って勉強したり、活動をしていたことを聞かされた。

今さら知った大野のことに、はぁ…とため息をつくと、大野が俺の顔を覗きこんできた。

大「ニノは、今何してんの？」

ニ「…俺は、ゲームの制作会社に勤めてるよ」

大「マジか！すげぇじゃん！」

ニ「…そう？」

大「んだって、お前高校ん時から、ゲーム作る仕事したいつってたじゃん」

ニ「あー・・そうだっけ」

大「そうだよ。すげぇなぁ。ニノ、夢叶えたんだね」

爽やかな風で僅かに金髪をなびかせながら、大野が俺に向かってフワッと笑った。

大「おめでとう、ニノ」

そう言って見せた笑顔が、ものすごく優しかった。

不意に見せられたその表情にドキッとした俺は、この人のこの笑顔を、今度こそ自分のものにしたいと強く思った。