涙 �� ページ35
公演が終了し、会場は大きな拍手で包まれた。
無論、俺も手が痛くなるほどの大きな拍手を送った。
大野に。
舞台の上で共演者と並んで挨拶をする大野の表情が、いつもの柔らかい笑顔に戻っていた。
大野の見せるギャップに、情けないくらい心が惹かれてしまう。
俺は大野にゾッコンだな…
花束を持って会場を出ると、受付の方へ向かった。
俺の名前を書いたカードを添えた花束を、「大野智に渡してください」と言って渡した。
本当は直接渡せばいいんだけど、なんだか照れくさくて敢えてそうした。
感想やお疲れ様の言葉は、家に帰ってからゆっくり話せばいい。
そして、俺の気持ちも…。
そう思って、俺は大野に挨拶をすることもなく、先に家へと向かった。
俺が帰宅して数時間後、カチャッと音がして、すぐに玄関へ向かった。
花束を抱えた大野が玄関に立っていた。
ニ「おかえり」
大「ただいまぁ。ニノ、コレありがとう」
ニ「おお…まあ、大したもんじゃないけど」
大「すっごい嬉しい」
照れくさくて素直に返せない俺に、大野は素直な言葉をくれた。
大野から花束を受け取って、家の中へと迎えた。
ミニテーブルの上にそっと花束を置いて、二人して向かい合ってラグの上に座った。
ニ「大野、お疲れ様。ダンス凄かったよ！」
大「ホント？」
ニ「俺、正直感動したよ！」
大「マジか」
ニ「ダンスを見て感動するなんて初めてだよ…。他のお客さんも、大野のダンス見て『凄い』て言ってたし」
大「んふふっ」
ニ「大野なら、凄いダンサーになるって思ったよ。お世辞じゃない。次、オーディションに行ったら絶対合格する」
大野の目を真っ直ぐに見つめながら、素直な感想を伝えた。
大「ありがとう。ニノにそう言ってもらえて嬉しいや！実は今日、舞台を観に来てた有名なダンスグループのリーダーとプロデューサーに、ウチのグループに入らないかって言われた」
ニ「ほっ、ほんとに！？」
大「俺、入るって即決で返事しちゃったけど」
ニ「おお、そっか！凄いよ、大野！良かったな！！」
大野にまたチャンスが巡ってきたんだ。
自分のことのように嬉しくて、一気に気持ちが高まった。
このまま、俺の気持ちも言ってしまおう。
そう思って、大野の目を見つめた。
ニ「大野…俺さ」
大「俺、明日からアメリカ行くよ」
ニ「…えっ」
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年3月22日 16時
