パピヨン～青い蝶～ (ページ29)

今日:21 hit、昨日:4 hit、合計:85,990 hit

ワンモアチャンス① ページ29

夕方には退院の許可が下りて、大野と一緒に家に帰ってきた。

プラゴミの日はまだだから、昨日食べたお寿司のパックが、ビニール袋に入った状態で置いてある。

それを見た瞬間、再び胸が締め付けられた。

大野は怒ってもいないし、気にしてもいない様子。

それがかえって余計に辛くなる。

いっそ、嫌味を言われた方がマシなくらいだ。

大野の器の大きさに自分が嫌になる・・

翌日。

携帯を持っていない大野に、家にある俺のパソコンを使わせた。

ネットでオーディションの情報を調べるも、なかなか自分に合ったジャンルのものが見つからず…。

あのオーディションが、どれほど貴重なものだったのかを思い知らされた。

だけど大野は、切羽詰まった様子なんて見せることなく、「そのうちまた、いいのが見つかるよ」て言ってくれた。

あまりにも申し訳なくて、せめてものお詫びの気持ちで、大野にダンスウェアを買ってあげることにした。

断る大野を強引に連れ出して、只今、大型のスポーツ用品店に来ている。

色んなメーカーのウェアをチラチラと見て回りながら、時折大野は、気になったものを手に取って見ていた。

ニ「それにする？」

大「えー、悪いよ」

ニ「いいって」

大「え～」

大野が持っているウェアを手に取った。

黒地に白のラインが入ったパンツで、メーカーのロゴがワンポイントで付いている。

近くのマネキンも履いていて、セットアップでグレイのパーカーを着ていた。

すぐに値段を確認してみると、まあ許容範囲。

すかさずパーカーも手に取った。

ニ「これ、セットアップで買ってやるよ」

大「えー、悪いって！」

ニ「いいんだって、買わせてよ。そうじゃなきゃ、俺の気が済まないから」

そう言って、申し訳なさそうな顔を浮かべる大野を置いて、レジへと持っていった。

申し訳ないのはこっちなのに…

お会計を済ませて、ウェアの入った袋を大野に渡した。

大「ありがとニノ」

袋を受け取った大野が、嬉しそうな顔をした。

晩ご飯用にお弁当を買って、一緒に家に向かっている途中。

すれ違った男の人が、大野の顔を見て足を止めた。

男「大野！久しぶり！」

大「あ、お久しぶりです」

男「なんだよ、東京にいたのかよ～！」

大「はい(笑)」

男「ちょうど良かった！今、時間ある？」

大「あー・・」

ニ「いいよ、俺、先帰ってるから」

大「ごめん」

この時、運命の歯車が動き出していたんだ。