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もう少しだけ、もう少しだけ、
何回心の中で唱えたかわからない。
今日の終電までには絶対帰ろうって、
そう、思ってたはずやのに。
きっと大ちゃんも同じことを考えてたはずやのに。
「ーーー、ごめん、」
昨日よりうんと口数が減った僕らは、
少し影になった海辺で手を繋いで、
ぼーっと日が暮れていくのを見送った。
『ううん』
真夏に外に居続けると、体力はとられるし、
汗もかくし、繋いだ手もどっちのかわからん汗で湿っていた。
"帰ろっか、"
何回も、何回も言おうとしては飲み込んで、
代わりに、
『大ちゃん、』
何回も名前を呼んだ。
「んー...?」
『.....、なんもない』
寂しそうな、嬉しそうな顔をする大ちゃんを
何回も見た。
「お腹すいたな...なんか買ってくる」
『あ、一緒に行く』
「いいよ、しんどいやろ」
『大丈夫、行く』
ねぇ、大ちゃん。
大ちゃんは何を隠し持ってるの...?
なんで、そんなに悲しそうなの...?
女性『あらー、汗だくじゃないの』
昨日と同じお土産屋さんで買い物をすると、人のいいおばちゃんがキンキンに冷やしたタオルを2つ貸してくれた。
女性『熱中症、気をつけなあかんよ?』
『「ありがとうございます」』
店員さんにお礼を言って浜辺に戻ると
少し、お母さんが恋しくなった。
.....言わなくちゃ、
"帰ろっか、"って。
一生このまま過ごすことなんか出来ない。
いつも引っ張ってくれる大ちゃんやけど、
今回は流星が言わな、あかんのやと。
『大ちゃん、』
思った。
「.....、かえ、ろっか、」
思い切って声をかけたら、こっちを見ることも無く大ちゃんがそう言った。
『う、ん...』
「うん」
『大ちゃん、』
「ん...?」
『ありがとう』
会いたいと言ってくれて、
帰りたくないと言ってくれて、
「何が...?」
流星は嬉しかったよ...?
浜辺に2人並んで座って、大ちゃんは全然こっちを向いてくれなくて、その袖を引っ張って少し首を伸ばしたら簡単に唇が重なった。
「おおにっちゃ、...ごめん、」
これが何のキスかは相変わらずよくわからんけど、
目にいっぱい涙を溜めた大ちゃんが、涙を零した分だけ"ごめん"と繰り返す大ちゃんが、明日笑ってくれたらいいのにって、ぎゅって、ぎゅーって抱きしめて僕らは2日目の夜を過ごした。
*
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ゆあ(プロフ) - 最近大西畑が好きになり、検索で見つけたちゆさんのお話に惹き込まれ、一気読みさせて頂きました。涙が自然と零れるほどに苦しくて素敵なお話でした。見てみると3年も前のお話で、続きがとても気になります。いつか更新されることを楽しみに待ちたいと思います。 (2022年7月25日 2時) (レス) @page17 id: ae87ac6459 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ - すみません、丈橋ではなくて大西畑でした…すみません… (2020年5月2日 11時) (レス) id: f409fbedb4 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ - とても面白いです!丈橋の気持ちがよく描写されていて、とても憧れます!続きがとても気になります! (2020年4月30日 16時) (レス) id: f409fbedb4 (このIDを非表示/違反報告)
ちゆ(プロフ) - みそらさん» コメントありがとうございます!一気読みして頂けたなんて嬉しい限りです!そろそろ終盤なので最後まで読んで頂けると嬉しいです(*¨*) (2019年3月24日 20時) (レス) id: 3ed9297e89 (このIDを非表示/違反報告)
みそら(プロフ) - 読み始めてすぐに惹き込まれてしまい、一気に読んでしまいました...!切なくて苦しくて愛しくて、続きがとても楽しみです。 (2019年3月23日 22時) (レス) id: 603a3a72ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゆ | 作成日時:2019年1月27日 15時