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ひとりでこんなに遠出をするのは産まれて初めてやのに、何でか不安は何もなかった。
帰宅ラッシュで込み合う電車は、目的地に近づくにつれてどんどん人が減っていく。
たどり着いた時には駅のホームには誰もいなくて、駅員さんさえももう帰った後で、
この時間から高校生が1人で入れる場所なんてないから、ホームを出てすぐの駅の待合所に腰をおろした。
自動販売機で飲み物だけ買って、やることもない僕は唯一持ってきた折り畳みの赤い携帯電話をポケットから取り出す。
1枚1枚の写真を思い出すようにゆっくりと見返していた。
その中に、混じっていたのはあの忌々しい写真。
この写真を撮ったのが誰なのかは結局わからず仕舞いやったはず、僕の記憶が正しければ―――、
＊
大ちゃんとの関係性を聞かれると何て答えるのが正解なのか、今でも悩んでしまう。
塾で出会って仲良くなって、なんでかわからんけど居心地がよくて、楽しくて、
一緒の高校に通うようになって、大ちゃん経由の友達も増えて、それも楽しくて。
廉くんも正門くんも大橋くんも、もちろん仲良しで大好きやけど、大ちゃんは特別やった。
うまく説明出来んけど。
やから、過剰な程に可愛いって言われたり、すぐ飛びついてきたり、過保護なくらい心配性やったりも嫌だと思ったことはないし、学校帰りに大ちゃん家で勉強してキスされたのもほんとの所嬉しかった。
その後も、時たま大ちゃんと二人のタイミングになると惹きつけられる様にキスをした。
やけど、僕らのキスには名前はなくて、そこに関係性もなくて、でもそれを人前でしていいものって言う認識でもなかった。
廉くんにも正門くんにも大橋くんにも内緒やった。
先生『大西くん、ちょっといい？』
やけど、夏休みの始まる直前、流星と大ちゃんは別々に先生から呼び出された。
放課後、面談室でその時の担任の先生に見せられたのは大ちゃんと高校の進路を決めたあの公園で僕ら2人がキスしてる写真やった。
先生『この写真が今生徒達の間で広まっててね。たまたま見た保護者の方から連絡があったの』
先生は困った表情で、伺う様に流星を見る。
先生『わかるのよ。ふざけてたまたまキスしてるように見える写真を撮ったんだって、でも、一応確認しないとって事でね』
言葉を、流星を傷つけないように言葉を選ぶ担任の若い女の先生に、
『お騒がせしてすみません』
そう一言返すのが精いっぱいやった。
＊
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ゆあ(プロフ) - 最近大西畑が好きになり、検索で見つけたちゆさんのお話に惹き込まれ、一気読みさせて頂きました。涙が自然と零れるほどに苦しくて素敵なお話でした。見てみると3年も前のお話で、続きがとても気になります。いつか更新されることを楽しみに待ちたいと思います。 (2022年7月25日 2時) (
レス) @page17 id: ae87ac6459 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ - すみません、丈橋ではなくて大西畑でした…すみません… (2020年5月2日 11時) (レス) id: f409fbedb4 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ - とても面白いです！丈橋の気持ちがよく描写されていて、とても憧れます！続きがとても気になります！ (2020年4月30日 16時) (レス) id: f409fbedb4 (このIDを非表示/違反報告)
ちゆ(プロフ) - みそらさん» コメントありがとうございます！一気読みして頂けたなんて嬉しい限りです！そろそろ終盤なので最後まで読んで頂けると嬉しいです(*¨*) (2019年3月24日 20時) (レス) id: 3ed9297e89 (このIDを非表示/違反報告)
みそら(プロフ) - 読み始めてすぐに惹き込まれてしまい、一気に読んでしまいました...！切なくて苦しくて愛しくて、続きがとても楽しみです。 (2019年3月23日 22時) (レス) id: 603a3a72ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゆ | 作成日時：2019年1月27日 15時
