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「……イチゴのショートケーキは、彼女の、僕の婚約者の大好物だったんです」
そこまで言って、佐々木さんが言葉に詰まる。
とっつーが、佐々木さんの両肩をぽんぽん、と優しく叩き、隣に腰掛けた。
「すみません、いきなり」
「いいんですよ。好きなだけ、好きなように話してください。ここにいるのは、口の堅い者ばかりですし。面白可笑しく茶化すなんてことは絶対にしませんから」
向かいのソファーに腰掛けた支配人が、優しい、落ち着いた声で言う。
「話すだけですっきりするってこと、あるからね」
良亮がそう言って、支配人とふたり顔を見合わせてにっこり笑った。
そうしたら佐々木さんも、「ありがとうございます」と、いつもの優しい顔で笑った。
「一番最初は、ふたりで来たんです。このお店に」
佐々木さんが静かに、語りだす。
婚約者のさやかさんは、大のスイーツ好きだったそうだ。
ある日、ふたりで訪れたこの店でイチゴのショートケーキを食べて以来、あまりのおいしさに感動し、この店のイチゴショートが彼女の大好物になったんだとか。
「うわ、それめっちゃ嬉しい」
「郁人、シンプルなものこそ味が伝わるって、気合い入れてるもんね」
「ちょ、そういう恥ずかしいことは言わなくていいんだよ」
郁人が良亮をぱしんと叩く。よっぽど恥ずかしかったみたいだ。
「ぷ、耳、真っ赤」
「うるせぇA」
「こらそこ。佐々木さんが話せないでしょうが」
面白がってからかっていたら、支配人にぴしゃりと怒られた。
ふたりして、少ししゅんとしたら、佐々木さんがくすりと笑った。
「彼女、生まれつき体が弱くて」
佐々木さんが再び、静かに語りだす。
その言葉で、全員の空気が少し変わったのを感じた。
あぁ、そうか。だから佐々木さんは。
「緊急入院した時には、もう」
もう何度も、その時のことを思い出しては嘆いているんだろう。
口元は柔らかく微笑んでいたけれど、その瞳には悲しみの色しか見えなかった。
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ろっか(プロフ) - お話めいっぱい書きすぎてあとがき入れられませんでした！！この計画性の無さ！！なのでコメ欄で失礼します。お読み頂きありがとうございました！あとがきはTwitterにでも載せます(笑)…ろっか (2019年12月27日 0時) (
レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろっか | 作成日時：2019年11月3日 16時
