５ ページ27
・
「え？じゃあ、彼女さんじゃないんですか？」
「えぇ…彼女は、その、何ていうか、幼馴染で…」
お詫びの品にと、わざわざ和菓子を持参したその男性は、和田さんというらしい。
立ち話もなんだと言うことで、カフェのテーブルで話を聞くと、先日一緒に来ていた女性は彼女でも不倫相手でも無く、和田さん曰くただの幼馴染なんだとか。
「幼馴染……」
私が和田さんの言葉を小さな声で復唱すると、何を思ったか和田さんが慌てたように言った。
「あの！えっと、違うんです、ああ、違くは無いんですけど…ええっと…」
しどろもどろなその反応に、ぴんとくる。
「好きなんですか」
「あ！ええっと…」
「好きだけど、長いこと先に踏み出せずにいる？」
ズバッと切り込むと、和田さんは頬と耳を真っ赤にしながら、消え入りそうな声で「はい…」と呟いた。
「すごいね、Aちゃん名探偵みたいだ」
「いや、和田さんが分かりやすすぎるのよ…」
目を丸くして感心したように私を見るとっつーに、違う違う、とひらひら手を振る。
きっと誰が見ても、今の和田さんは好きな女性になかなか踏み込めない、奥手な男性だ。
「…あの、お察しの通りで…もう10年以上の片思いです……」
「10年！？」
思わず出した大声は、見事なまでにとっつーと揃った。
10年以上も片思いし続けているなんて、一途にもほどがある。
「…気持ち悪いですよね、こんな…ずっとうじうじした男…」
そう言って、和田さんは眉を下げて俯いてしまう。
確かに男らしくはないかもしれない。けど。
「でも、好きなんですよね。そして、彼女とは一緒にカフェでお茶をするくらいには仲が良い」
「…でも、怒らせてしまいました」
「そう言えば、何で彼女はあんなに怒って出て行ってしまったんでしょうか？」
ふと、あの日の場面を思い出す。
ビンタを食らわすほどの怒りは、相当なものに違いない。
「失礼ですけど、ああやって彼女を怒らせることってよくあるんですか？」
「いや、けんかはあんまり…僕がこんなんだから、一方的にいろいろ言われることはありますけど。ビンタは初めてでした…」
そう言ってまた、しゅんと肩を落としてしまう。
「……できれば男らしく、告白できたらって、いつも思いはするんですけど」
和田さんが、ふう、と息を吐く。
今までこんな風に、決意をしてはすぐに諦めて、を繰り返してきたんだろう。自分に自信が無いんだ、きっと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ろっか(プロフ) - お話めいっぱい書きすぎてあとがき入れられませんでした！！この計画性の無さ！！なのでコメ欄で失礼します。お読み頂きありがとうございました！あとがきはTwitterにでも載せます(笑)…ろっか (2019年12月27日 0時) (
レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろっか | 作成日時：2019年11月3日 16時
