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「……え?」


突然のことに、頭が真っ白になる。

五関部長のはぁー、というため息がまた耳にかかった。

どきどきする、なんてもんじゃない。
私を後ろから抱きすくめている男らしい腕に、心臓がはち切れそうだ。

ふわりと鼻をくすぐった部長の香りに、くらくらした。

…え、待って、これは一体…?
五関部長は、お見合いした、あの綺麗な社長の姪っ子さんと結婚するんじゃないの…?


「え、ぶちょ」

「こっち向くな。恥ずかしいから」


え!なんだそれ!そんなカワイイ台詞は、反則だ。

照れている部長の顔を見たくなって、無理矢理後ろを振り向こうとしたら、ふっと体が軽くなる。
…と、思ったのもつかの間、くるりと簡単に向きを変えられ、気付けば私は、五関部長の胸にすっぽりと収まっていた。

「え、えっ」

再び戸惑っていると、こつん、と頭の上に部長が顎を乗せる感覚がした。


「しないよ。結婚」

「え?」

「…お見合い、気にしてたんでしょ?」

「え、バレて」

「バレバレ。Aは分かりやすすぎ」


喋るたびに、かくかくと頭に伝わる振動にすら、どきどきさせられる。
そして、ずっとバレていたということに、かあっと頬が熱くなるのを感じた。


「それにさ、俺、Aが居ないと結構ダメみたい」

「…どういう…ことでしょうか……」

「今回の件も、もちろん普段も。たくさん助けられてるし、Aの明るさに、俺は救われてるんだよ」

「…うぅ」

「え?ここで泣く?」


きっと、この声は、薄ら笑いを浮かべている。私を馬鹿にする時の声。
そんな声すら、ああ、好きだなあ、なんて。


「……うう、好きです、ぶちょー」

「…さっき聞いたよ」

「言い足りないです」

「我慢しなさい」

「えぇ…」


フフッという笑い声の奥に、どきんどきんと速く脈打つ、心臓の音を見つけて。
それを聴いたら、また、「好き」の気持ちが溢れてくる。


我慢した分の「好き」を込めて、思い切り背中に手をまわした。








fin.

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奏風(プロフ) - 初めまして。素敵な作品だったのですね。五関君の作品はあまりないので、見つけて嬉しかったです。お話もとっても素敵で、最後まで一気に読んでしまいました。 (2022年8月3日 12時) (レス) @page5 id: 0c5b809cd3 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 五関くんに引き続き、橋本くんと戸塚くんのストーリーも気になります。早く読んでみたいです。これからも、A.B.C-Zのストーリーを期待しています。 (2019年11月30日 0時) (レス) id: 5ca5d758c8 (このIDを非表示/違反報告)
ろっか(プロフ) - 妙子の娘さん» お久しぶりです〜!続けて読んでくださっていて嬉しい…!お待たせしてばかりですみません……もうちょっとさくさく書けるように努力します!笑 (2019年11月4日 0時) (レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
ろっか(プロフ) - ふーみんさん» ふーみんさん、ありがとうございます…!なんとお優しい……えびちゃんのお話、もっと増えて欲しいですよねぇ!キュンキュンして頂けるように、頑張ります!! (2019年11月4日 0時) (レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
妙子の娘(プロフ) - お久しぶりです。今回も楽しく読ませて頂きました。早く続気が読みたいです。待ってまーす! (2019年10月30日 22時) (レス) id: 3bfa5bcd50 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろっか | 作成日時:2019年8月26日 0時

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