あなたの背中

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次の日から、人事部は大忙しだった。


砂本さん…というか、和田部長とその下に着き従っていた人たちのこれまでのいろいろが公になって、株主総会までに片付けなきゃならない案件が山積みになってしまった。
おまけに人員が減ってしまったんだから、もう時間がない。
砂本さんに任せていた通常業務だってあるのだ。

部長は眉間に皺を寄せてパソコンに向き合っていたかと思えば、急に立ち上がってどこかへ向かったり、電話をしたり。こんなにバタバタしている部長は見たことが無いくらい。

そんな私も、悠長に部長を観察している暇なんて無く。
部長に余計な仕事が回らないように、精一杯、一歩手前でせき止めている。
おかげでいろんな部署から部署へ、あちこち動き回って目が回りそうだ。


…おかげで、余計なことを考えなくて済むけれど。


無心でカタカタとキーボードを叩き、資料のファイルをめくり、気が付けば定時。
それでもまだまだ片付けなくちゃならない仕事はあって、他部署にいる関係者が帰ってしまわぬうちにと、慌てて立ち上がる。


「あぁ…終わんない…」

泣き言をこぼしながら、急いで廊下を走る。


「すみません…」

営業部に行くと、やたらと背が高くて怖そうなイケメンくんが対応してくれた。
塚田さんを呼んでもらって、次の研修会でお願いしている内容の資料を渡す。

塚田さんはにこにこと明るい太陽みたいな笑顔で、

「五関くんに頼まれたら断れなくってさー」

と、金髪の頭をがしがしとかきながら笑っていた。



よし、とりあえず他部署に行かなきゃいけない用事はこれで終わり。
あとは今日中に仕上げておかないといけない資料と、明日の朝一で申請しないといけないものの準備と……ああ、しまった、まだ途中のデータ整理が残ってた。

これからの段取りをぶつぶつと呟きながら廊下を走る。
きっと傍から見たら、今の私は確実に怪しい。


と、通りかかった会議室の中に、見覚えのある背中を見つけて立ち止まった。


「いやぁ、五関くんのおかげで良い方向に向かいそうだよ。さすがだね」

「いえ、僕は何も」

「そんな謙遜しなくてもいいじゃないか」


あはは、と気持ちよく笑っているのは、うちの社長。
見覚えのある背中は、五関部長。

そして、その隣にいたのは、どこか見覚えのあるすっきりとした美人。
五関部長を見て、微笑んでいる。

……そうだ。
あれは、社長の姪っ子さんだ。



どうしてここに？

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