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「A」
「はい、部長?お茶でも淹れます?」
「や、違う。来て」
部長にちょいちょい、と手招きされて、デスクへ向かう。
「お前、この件なんか知ってる?」
五関部長が顎でくい、とデスクトップを指し示す。
そんな姿もカッコイイ…なんてね。いけない、仕事仕事。
画面に表示された書類をざっと流し読むと、人事異動に関しての通知文だった。
先日、大幅な上層部の人事異動が行われた。
きっかけに関しては、いろいろな憶測が飛び交っているけれど、五関部長のすぐ下で働く私は、知っている。
秘書課の一ノ瀬主任が、ずっと和田常務のお気に入りだったことも、その件でいろいろあって、何故か河合課長が五関部長のところに突然怒鳴り込んできたことも、その後、これまた何故か一ノ瀬主任が部長お気に入りのお菓子を持ってお詫びに来たことも。
そして、そのお菓子につられたかどうかは定かではないけれど、長らく改編されていなかった上層部に、五関部長がメスを入れたことも。
「…先日の幹部級再編成の件ですよね?あとは株主総会で可決されれば」
「ああ。でも、ここ、読んでみ」
部長が細長くて骨ばった、綺麗な指でディスプレイを指さす。
おっといけない。見るのはそっちじゃない。
慌てて指さされた部分をよく読むと、問題のあった和田常務は、まだそのまま常務の席を外れていないようだった。
「…あれ?」
「…俺、こいつ降ろしたよね?」
ふ、と私を見上げた銀縁メガネの奥の目は、鋭く光っていて。
うわ!怖い!でもカッコイイ!!素敵!!!
…という心の奥の声をなんとか封じ込めて、神妙な顔をつくる。
「…はい。違う方のお名前を、上げていたかと思います」
「そうだよね。A、見てたもんな」
納得いかない様子で、うーん、と唸りながら顎をさする部長。
突然、傍らに置いていた分厚いファイルとタブレットを持って立ち上がり、それらをひょいと私に預けた。
「行くぞ、A」
「え!は、はい!」
突然渡されたものたちを落とさないように両手で抱え、慌てて部長の背中を追う。
…良いように使われてるけど、でも、幸せ。
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奏風(プロフ) - 初めまして。素敵な作品だったのですね。五関君の作品はあまりないので、見つけて嬉しかったです。お話もとっても素敵で、最後まで一気に読んでしまいました。 (2022年8月3日 12時) (レス) @page5 id: 0c5b809cd3 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 五関くんに引き続き、橋本くんと戸塚くんのストーリーも気になります。早く読んでみたいです。これからも、A.B.C-Zのストーリーを期待しています。 (2019年11月30日 0時) (レス) id: 5ca5d758c8 (このIDを非表示/違反報告)
ろっか(プロフ) - 妙子の娘さん» お久しぶりです〜!続けて読んでくださっていて嬉しい…!お待たせしてばかりですみません……もうちょっとさくさく書けるように努力します!笑 (2019年11月4日 0時) (レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
ろっか(プロフ) - ふーみんさん» ふーみんさん、ありがとうございます…!なんとお優しい……えびちゃんのお話、もっと増えて欲しいですよねぇ!キュンキュンして頂けるように、頑張ります!! (2019年11月4日 0時) (レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
妙子の娘(プロフ) - お久しぶりです。今回も楽しく読ませて頂きました。早く続気が読みたいです。待ってまーす! (2019年10月30日 22時) (レス) id: 3bfa5bcd50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろっか | 作成日時:2019年8月26日 0時