あなたの背中

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「五関ってば、ほんと九条ちゃんのこと好きだよね」


打ち合わせに向かう途中、河合課長が楽しそうに言った。


「…そう、ですかねぇ」


一瞬、舞い上がりかけた気持ちを、しゅん、と萎ませる。
その好きは、きっと、可愛い部下としての、好き。

だってよく、五関部長は私で遊ぶ。



『Aってほんとイジリがいあるわ』


何度そう言ってけらけら笑われたことか。

あのしわくちゃ笑顔が見られるからいいけど。
…いいけど！






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「A、来週の水曜、夜空けといて」

「え？」



唐突に部長に言われて焦る。

夜！？何！何があるの！
もしかして、夜のデートに誘われてしまうのかしら。どきどき。なんてね。

仕事のスケジュールの話だって分かってますよーだ。



「KF2カンパニー主催のパーティー。女性同伴じゃないといけないんだよ。お前付いてきて」

「…あ、はい。…珍しいですね」


驚いて、思わずそう言ってしまった。

会社同士の交流パーティー。
取引先とのこういった場は、人脈を築くのに有効的。
社長や専務から、何故か絶大な信頼を寄せられている部長には、お呼びがかかることが多い。

だけど五関部長は、いつも面倒だからってなんだかんだそういう社交的な場への参加を回避する。そういう風にスケジュールを組むよう言われることも多々あった。
それでも人脈が築けているのがすごいことなのだけど。

女性同伴のパーティーには、普通恋人や奥さんを連れていく。
秘書や部下が付いていくのは、そういう相手がいない時。


まあつまりは、そういうこと。


そこに付いてきて、と言われたのだから。
ついつい頬がゆるんでしまうのも、仕方ないってもんだ。

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