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「で、シンガポール行くんだ?」

塚ちゃんが、空心菜をもりもり食べながら言う。

「うん、滝沢専務の急な出張に同行することになって」

「へぇ〜!シンガポールって何が有名だっけ?お土産お願いね!」

「仕事だからね?遊びに行くんじゃないからね?」

それに、今回の出張は本当に急に決まったこと。
ただでさえ忙しい滝沢専務のスケジュールをこじ開けたのだ。
それについていく私のスケジュールだって、相当タイト。
もう仕事に頭の先から足の先までずぶずぶに漬けられて、ふやけてしまいそうなスケジュールが出来上がってる。

「そうなの?残念」

塚ちゃんがそう言って、ビールをぐいっと飲み干した。
その隣で、とっつーが呆れたように肩をすくめている。

「もう、塚ちゃんは本当に…Aちゃん、無理しないでね」

「ありがと、とっつー…そう言ってくれるのはとっつーだけよ…優しさの塊……」

そう言って大げさに顔を覆って見せると、とっつーが小さく笑った。

「そうかな?俺は、俺なんかよりもっと、優しい人知ってるけどね」

ね、郁人?ととっつーが首を傾げると、郁人はきょとんとした顔で首を捻った。
いや、分からないんかい。

とっつーは、そんな郁人を見て、にこにこ笑った。



「ま、気を付けて行って来なよ」

「うん、ありがとう。とっつー…って言っても行くのは来月だし、たったの3日だけど」

「そんな短いの!?大変だね〜」

「だからそう言ってるじゃん!塚ちゃん、人の話聞いてた!?」

「ごめんって」


あはは、と笑う塚ちゃんを、とっつーが楽しそうにばしん、と叩く。
郁人はそれを見てうきゃきゃと嬉しそうに笑っていて、ああ、平和だなぁ、なんて私も嬉しくなる。

うん。やっぱり、楽しいなぁ。
この関係は、きっとずっと変わらない。変えたくない。


ふっと横を見ると、優しい顔で笑う郁人と目が合って、どきっとした。


「…楽しいね」

「うん」


…いや、関係が変わっても、変わらず笑っていられることが、すごく幸せなのかもしれない。

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- 最高でした、なんでこの小説に早く出会わなかったんだろうと後悔しました。主人公の心の動きに大変共感できました。大好きです。 (2023年1月2日 20時) (レス) @page18 id: e81db92c6d (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - 何回読んでも最高です… (2022年3月29日 13時) (レス) @page18 id: b45d85880b (このIDを非表示/違反報告)
ゆりっぺ(プロフ) - 最初から何回も読み返してます。続きが気になります〜楽しみです!! (2020年9月11日 21時) (レス) id: a836ecca10 (このIDを非表示/違反報告)
すー(プロフ) - ろっかさんの作品全部大好きです!更新楽しみにしてます! (2020年7月24日 17時) (レス) id: a2ae454f2a (このIDを非表示/違反報告)
ろっか(プロフ) - ゆりっぺさん» お待ちくださりありがとうございます…!そのお言葉で頑張れます◎ (2020年7月4日 23時) (レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろっか | 作成日時:2020年6月28日 20時

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