続・気付けばとなりは

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「おはようございます」

「おはよう、Aさん」


私は、常務の専属秘書から、専務の専属秘書になった。
人事の五関部長の計らい…なのかどうかは定かじゃないけど、以前の専務付秘書で、私の先輩にあたる女性が家庭の事情で退職されたとのこと。
その後釜が、私。ということらしい。

五関部長はじめ、人事部の皆さんにはいろいろと迷惑をかけてしまった手前、頭が上がらない。

…そして、この目の前の、恐ろしく美形で男前な私の上司にも。


「…あの、滝沢専務」

「何？」

「そのお荷物は…一体どうされましたか…」

「え？だって今日、午後から休暇取ってるから」

「いや、そうですが！もしかしてまた、火山にでも行くおつもりですか！？」

「そうだけど」


滝沢専務は、涼しい顔できらりと微笑む。
その眩しさったらありゃしない。

ていうか、火山探検が趣味って。
このきらきらした王子のような専務からは想像できなさすぎる。


「直接行くんですか…」

「時間がもったいないからね」

「時間……」

「あぁそうだ。来月のスケジュール、組み直して欲しいんだけど」


専務が、タブレットを操作すると、私のタブレットに専務の新しい出張のスケジュールが送られてきた。
すぐに確認する。
確かに、これは早急に組み直して会議の予定をずらし…ん？


「専務、海外出張なんですね」

「うん、シンガポール」

「滞在期間…タイトですね」

「そうなんだよ。スケジューリング頼んだよ」

「早急に組み直します」

「Aさんも付いてきてね」

「はい。承知し…え？」

「よろしく」


滝沢専務がまた、きらん、と笑った。

私はきっと今、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているに違いない。

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