その100(大コンペ準備編) ページ6
無事100話達成です!いつも読んでくださり、本当にありがとうございます!
☆
実際制作者じゃないからわからないけどね、と苦笑いするヒナさん。
律円果自身の不安と向き合わせるために作られたゲームだからこそ、芸能人=使い捨て=アバターとしてヒナさんの部屋は作られたのかもしれない。
「それでさ、気づいたんだよね。私、『ヒロイン』って言われている登場人物もさ、使い捨てなんじゃないかなって」
ヒナさんの表情が歪む。悲しくて、苦しい気持ちを混ぜたようだ。
ゲームごとに主人公、すなわちヒロインが違うのであれば、完成したヒロインは、キャラクターはどうなるのだろう。
人気のあるうちは良いかもしれない。けれど、人気がなくなれば。日数が過ぎてしまえば。人々の記憶の中から消えてしまう。それは利用され、捨てられたのと同じだ。
「私もさ、この世界では『迷いこんだヒロイン』だから。この子たちと一緒かな、なんて思ってたら、いつの間にか彼女たちに同情しちゃって。そしたら、なんだか愛おしくなったんだよね」
ヒナさんは穏やかな表情で人形を見ていた。
「今はもう、エンディングが終わったから捨てられるかもしれないけどね。それはできないなあって」
だからヒナさんはマツリさんに言われても片付けなかったんだ。自分と重ねて。そして自分と同じだから。
「あはは、ごめんね、こんな重い話」
「いえ、悲しいけれど、とても、優しい、話でした」
「そっか」
そっかそっか、と何度も頷くヒナさん。するとー
ほろり、とヒナさんの目尻から、涙がこぼれた。
「…ありがとう、沙良ちゃん。人形、綺麗って言ってくれて。大事にしてるってわかってくれたの、沙良ちゃんが初めて、なんだ」
ほろほろと零れる涙が、ヒナさんの頬を、服を濡らしていく。
「皆、『捨てればいいのに』って」
それは、悲しいことだと思う。まるで自分を捨てろと言われているような気持ちになるだろう。
「…ヒナさん」
ポケットからハンカチを出して、ヒナさんに渡す。ありがとう、と受け取ってもらえた。
「ヒナさんさえ、よければ、人形、綺麗にするの、手伝わせて、もらえませんか」
「…いいの?」
頷く。
「いろいろ、ゲームのこと、ヒロインのこと、教えて、ください」
もっと、知りたい。ヒナさんのことも、他の人のことも。
「…ありがとう。じゃあ、約束、ね」
ヒナさんが小指を出す。
「はい…」
私の小指。二つの小指を結び合わせ、私たちは約束した。
7人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ソフィア(プロフ) - 如月すやさん» いつもコメントありがとうございます!必ず投稿は続けますので、よろしくお願いします! (2021年8月23日 23時) (レス) id: 21c625e26e (このIDを非表示/違反報告)
如月すや(プロフ) - 続編待ってました!ゆっくりでも全然大丈夫(誰目線?)ですので、更新頑張ってください(^-^)/ 応援してます! (2021年8月19日 16時) (レス) id: f380242dac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ソフィア | 作成日時:2021年8月18日 23時