───と天使様 ~2~ ページ2
すっかり気分が良くなった学園長は『我が校にはどうしてヴァイオレットさんのような方が少ないんですかねえ』と愚痴を零し、そしてたった今思い出したかのようにユウの方を見た。
『そこのあなたも一緒に着いてきてください。保護者に連絡もつかない無一文の若者を放り出すのは教育者として胸が痛みますので』
くるりと前を向きコツコツと踵を鳴らしながら歩いていく学園長を見てぽかんと口を開けるユウ。
そんな彼女にヴァイオレットは手を差し伸べた。
『行きましょう』
ふわりと微笑む彼女に女性ながらドキッとしてしまい、混乱で目の前がくらくらとする中、やっと思いでユウはヴァイオレットの手を掴んだ。
繋いでみてユウは驚いた。
手袋で隠されている彼女の手はとても固くて──
──まるで機械のようだったのだから。
ヒュオオオオオオオオ。
「......寒ぅッッ!!」
──オンボロ寮。
冷たい烈風にガクガクと震えるユウに対しヴァイオレットは対照的に平然としていた。
「これは...........」
今は使ってないと聞いて嫌な予感がしたが、まさかここまで酷いとは。
人の住まない家は確実に朽ちていく。その建物は今にも崩れそうなポイントをとっくのとうに通り過ぎていた。
はっきり言ってボロい、言い方を変えれば。
「趣がありすぎる」
「そうでしょう、そうでしょう。さあ中へどうぞ」
ニコニコと笑い、幽霊が今にも出そうな建物に向けて「さあ中へどうぞ?」
この鴉。
正気か?とユウは思わず表情を歪めたが、ヴァイオレットは表情を変えなかった。
それどころか、「何から何までありがとうございます」とお礼をいう始末。
「学園長はお仕事にお戻りください。あとは、自分達でどうにかしますので」
「おや、そうですか?では、私は調べ物を一度してきますので、くれぐれも学園内をウロウロしないように」
では!と最後に音符が付きそうなくらいルンルンと帰る学園長。
(あの鴉......いつか絶対に泣かす)
ゴゴゴゴゴゴゴッッと怒りに震えるユウの背中をポンっと誰かが触れた。
その誰かはもちろんヴァイオレットなのだが、ユウは小さな悲鳴をあげた。
「な、なに!?」
「申し訳ございません。何度お呼びしても返事がなかったので」
驚いた......どうやら、自分はヴァイオレットの声が聞こえなくなるぐらいあの鴉に怒っているらしい。
「お体が冷えますので、ひとまず入りましょう」
キィッとヴァイオレットが、扉を開ける。
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手ふぇち - 好きと好きが混ざってる・・・!!最高です!更新待ってます! (2021年9月11日 15時) (レス) id: e31fa55851 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぷ - ヴォァッッ好きですッッ、、、、この2つのクロスオーバーが見れると思いません出した、、、お体に気をつけて更新頑張ってください! (2020年10月11日 21時) (レス) id: 7db8c489ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リン酸デス | 作成日時:2020年9月6日 14時