隣 人 さ ん ≪ Kei.I ≫

隣人09. 交際の公認 ページ9

それから伊野尾くんの机をみんなで囲んで。

お母さんの差し入れのロールケーキを頂いてしまった。








「Aちゃんはほんとに美味しそうに食べるね！」


目の前でにこにこしているお母さんにそう言われて。

少しだけ照れくさくなりながらもロールケーキを頬張る。






そしてあっという間にロールケーキを綺麗に食べ終えた。








『あ、あの…すごく美味しかったです。

ごちそうさまでした。』



そう言ってお母さんにぺこっとする私。






「やだやだ！そんな固くならなくていいよ！」


『い、いや…せっかく頂いたので』



そう言ってまた丁寧に会釈をする。






「こんなに礼儀正しい子だったなんて。

ぜひぜひ慧と付き合ってほしいね。」



そうしみじみ呟いたお母さん。

その言葉に目を丸くしてしまう。




これは…交際公認というやつですか。

てゆうか…伊野尾くんと付き合った覚えないんですけど。






そんなお母さんは「仕事があるから」と言って

そそくさと家から出て行ってしまった。








そして…伊野尾くんと地獄の2人きり。

そんな伊野尾くんは嬉しそうに微笑んでいて。






「…交際のおっけーもらっちゃった」


何を言うかと思ったらそんなこと。






『別に付き合ってないですよ』



「ええ…Aちゃんと付き合ったら楽しそうじゃん。


優しいし、目上の人には礼儀いいし。

顔は可愛いし、ナイスバディだし。」





『最後の一言余計ですよ』


にこにこしている伊野尾くんを軽く睨む。




私と伊野尾くんが付き合う…か。

うんうん、あり得ないな。





あのときはちょっとだけ伊野尾くんのこと好きなのかな…って思ったけど。

改めて…伊野尾くんはただの隣人さんということを実感した。








「ふふっ…付き合えるように頑張ろ」


『悪いけど年上には一切興味がないので』



「ええ…じゃあ勝ち目ないじゃん」




ぶつぶつ言っている伊野尾くんを少しだけ見つめて。









そのまま「失礼します」と言って伊野尾くんの家を出た。









そんな私の胸はなぜか温かかった。

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