隣 人 さ ん ≪ Kei.I ≫

隣人16. 地獄の契約 ページ16

翌日＿＿＿





午前から正午に変わりそうな時間。

私は伊野尾くんの家の前にただただ立ち尽くしていた。






それもそのはず…昨日は伊野尾くんと"地獄の契約"をしてしまったから。

約束は守ってしまう私は結局伊野尾くんの家の前まで来ていて。








少し緊張しながらも

伊野尾くんの家のインターホンをそっと押した。




すると中からどたどたと足音が聞こえて。

それと同時に家のドアががちゃっと開いた。






「わあ…ほんとに来てくれたんだ！」


『誘ったのどっちですか』



「でも…ほんとに来ると思わなかったから！」


『人の約束破るほど最低じゃないですよ』





私がそう言うと伊野尾くんはどこか嬉しそうに微笑んで。





「入って入って」と言って家の中に招き入れた。



……



2回目の伊野尾くんの家。

少しだけ緊張するのは気のせいだろうか。




ラベンダーのような香りが鼻を掠めて。

私より少し広くて綺麗な家に改めて驚かされる。






「ふふっ…ふふんふふん」


謎の鼻歌を歌う伊野尾くんを少し冷たい目で見る。

するとばちっと目が合って。





「そんな冷たい目で見ないでよ」


『…だって変人だからですもん』



「…ちょっと！

なんか最近、Aちゃんの塩っ気増してるんだけど！」



そんな伊野尾くんは軽く無視し、

目の前のソファにゆっくりと腰掛ける。




そんな私を見た伊野尾くんは

にこにこしながら私の隣に腰掛けた。







『…くっつかないでくださいよ』


「えへへ…冷たいなぁ」



『変態の隣には座りたくありません』


「えええ…ひどいよ」


そう言って軽く泣き真似をする伊野尾くん。

そんな伊野尾くんを思い切り睨む。





「ちょ！何でそんなに睨むの！怖い！」


『怖いのは…不自然な泣き真似をする伊野尾くんの方ですよ』


そう言ってまた伊野尾くんを睨む。

そんな伊野尾くんはまた泣き真似をして。







「はぁ…せっかくAちゃんのためにカップケーキ作ったのに。

そんな冷たい態度取られたらあげられないなぁ。」



『えええ！ちょ！食べたい食べたい！』




「じゃあ…これからは優しくしてくれる？」


『はい…頑張ります』



そう言うと嬉しそうに微笑んだ伊野尾くん。







そんな私は伊野尾くんよりカップケーキでいっぱい。









…どうも私はスイーツには弱いらしい。

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