だから僕等は【オリジナル短編】 (ページ1)

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誰かに必要とされたかった少年の話ページ1

僕は酷く疲れていた。
なるべく早く家に帰りたかった筈なのに、なぜか僕の足は通学路の途中にある公園へと動いていた。
ベンチに腰を降ろし、ふと腕時計を見ると、午後５時ちょうどになっていた。
さっきまで元気に遊んでいた子供や、犬の散歩に来ていた人達が次々に居なくなっていく。

そういえば今日の放課後、教室にしばらく居たときもこんな感じだったっけ。
僕がぼんやりしている間に、クラスの皆は部活に行ったり、友達を誘って帰って行った。

僕は今のところ帰宅部だし、学校に大した用事もないからさっさと帰ったっていいはずなんだ。
僕がそうしなかったのには理由がある。

変な話だが、僕は誰かから何かに誘われるのをずっと待っていた。

例えば「一緒に帰ろう」だとかありきたりな物でも。誘いはとにかく何でもよかった。
そんな誘いは来なかったけれど。

そうしてまで人に誘われたいのには、僕並みにちゃんと理由がある。

僕は人に必要とされた事がほぼない。
家族ですらも本当に僕を必要としているのかわからない。
他人から必要とされている人は大体何かしらに誘われることが多い。

だから僕は本当に誰からも必要とされていないのか確かめるために、さっきのようなことを一週間近く続けている。
けど誰一人として僕を誘う人は居なかった。
本当に僕って必要ない人間なんだなぁ、とも思った。だけど完全にそういうわけでもなかった。
もしそうだとしたら、僕は今ごろ不登校にでもなっている。

同じクラスの目立つ男子グループ。僕はそいつらに毎日、恐らく必要とされているからこその事をやらされている。
いや、やらされているはおかしい。やらせてもらってる、の方が正しい。
内容は主に購買に飲み物とかを買いに行ったり、移動教室の時の忘れものを取りに行ったり..
これって僕を頼ってくれてるって事だし、それは即ち、必要とされてるって事だと思うんだ。
周りは違うって言うけど、他の価値観なんてもうどうでもいい。

在り方はどうであれ、必要とされている事に変わりはないんだから僕はそれでいい。

…違う。本当は薄々気付いてる。
これは必要とされてるって事じゃないって。
ただいいように使われてるだけだって。
信じたくなかった。

ふと空を見上げると、そこには澄んだ綺麗な夕焼けが広がっていた。

…いつか、本当に僕が誰かに必要とされる日は、本当の意味で頼られる日は来るのだろうか。
例えば、今空に広がる綺麗な夕焼けのように、いつか僕の心も澄んだ色になる日は来るんだろうか。

今日も一日が終わっていく。誰からも必要とされなかった一日が。