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鶴丸が襖を開ける。
そこには、顔色の悪い少年が眠っていた。
私は傍に寄り添う。
「貴方を早く目覚めさせてあげますので。」
私は彼の胸に手を当て、霊力を注ぎ込む。
鶴丸の時とは違って、抵抗を感じる。
なるほど、彼が言ってたのはこれか…。
しかし何故鶴丸の時はすんなりいけたのだろう。
まあ考えても仕方ない。
私は更に霊力を込める。
______
彼の顔色は少し良くなり、呼吸音もはっきりするようになった。
私はというと、ちょっと目眩がしてきた。
「審神者。顔見ろ。」
鶴丸が私に鏡を見せる。
今剣ほどでは無いが、顔色が悪かった。
今日はここで止めよう…。
私は霊力の供給を止めた。
「今日はこれで止めにします。」
「まあ、懸命な判断だな。」
私は「また明日も来ます。」と言い残し、鶴丸と部屋を出る。
「ひとまず俺の部屋に戻って寝ろ。」
「いや、前の審神者の部屋で大丈夫なのですが…。」
「あんな薄気味悪い所で十分に回復出来るかよ。特別に俺の部屋を使わせてやる。」
「わかりました。」
私は鶴丸と共に彼の部屋へと向かう。
____
「…なあ審神者。」
「何でしょうか。」
「あんた、家族に審神者はいたか?」
「そもそも家族がいませんので。」
「そうか…。」
何故そんなことを聞くのだろう。
私の家系に審神者がいたとしても彼にはなんの得にもならないのに。
「なんか、あんたとあの女が少しばかり似ているような気がしてな。」
「そうですか。」
まあ似ている人は世界に3人はいると言うし、そんなこともある。
「私からも1つ、あの時『私は政府に騙されている』と言っていましたが、どういうことですか?」
「そのまんまさ。本来は新米審神者に新たな本丸が用意され、刀剣男士を顕現させていくものだが、あんたは違っただろ?政府は霊力が人一倍強いあんたに何とかさせようとわざと必要な情報を隠し、ここに転送したと俺は見ている。」
そんな。
霊力が強いとはいえ、私はまだ新米審神者だというのに。
「その証拠に、審神者の手伝い係に政府から派遣されるこんのすけがいない。」
こんのすけ…?
よく分からないが、政府から厄介事を押し付けられたっていうのはハッキリした。
身寄りが無い私はここにいるしかないと分かっての事か。
汚いやり口だ。
「まあ、同じ本丸に住む者として仲良くしようじゃないか。」
「本当に仲良くする気があるようには思えませんが。」
「ははっ、バレたか。」
それから少し他愛のない話をして、就寝する。
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作者名:桜花 | 作成日時:2020年4月24日 0時