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目を覚ますと、そこは鶴丸の部屋だった。
あれ、私の呪いは…?
気づけば痣も苦しみも無くなっている。
「起きたあーーーっ!!!」
誰かが私に抱きついてくる。
「乱、どうしてここに?」
「あんたたちが目を覚まさないかずっと待ってたの!2人して無茶して…。」
2人?
私は隣の布団を見る。
そこには顔色の悪い鶴丸が眠っていた。
恐らく、霊力が欠乏しているのだろう。
「何故鶴丸が…?」
「あんたの痣を例の鎖に吸わせた後、鶴丸と僕が引っ張って破壊したの。まあ、2、3日あれば回復するとは思うけどね。」
鶴丸…。
審神者を憎んでいるはずなのに、どうして私を…。
「とりあえず……。」
乱が私に土下座する。
「兄弟たちを助けてくれてありがとう。本っ当にありがとう…!!」
「土下座なんてしないでください。私は審神者としてやるべき事をやったまでなので。」
彼は顔をあげる。
「あはは。やっぱりあんた、あいつとは違うね。」
「別人ですので。」
「そっか。」
乱は笑う。
この本丸に来てから、初めて屈託のない笑顔を見れたかもしれない。
「あのさ、僕、ちょっとだけならあんたを認めてやってもいいよ。」
「何で上から目線なんですか…。まあ、認めてくれたのは有難いですが。」
「前から思ったんだけど、口調も表情も堅くない?もっと気楽にいこうよ、『主さん』!!」
……え?
「乱、今何と…?」
「『主さん』って言ったよ。言ったじゃん僕、あんたを認めるって。」
……そうか。
私、やっと『主』として認められたのか。
今までの人生で『誰かの特別』にはなれなかった私にとって、それは私に暖かい感情を思い出させるきっかけになった。
「あ、主さんちょっと照れてない?」
「照れてません。」
「嘘つけ!顔隠すなー!」
誰かとこんなに仲良さげに話すことは無かった。
今まで友達はいらない、1人で充分だと思ったけど。
こういう時間も悪くないかもしれない。
私の中の小さな暖かい感情が、そう思わせる。
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作者名:桜花 | 作成日時:2020年4月24日 0時