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“夢”から覚めた後、
私は独り、賑わう街を歩いていた。
辺りはすっかり夕暮れで。
家族連れや恋人同士、多くの人が夜に染まる世界を楽しんでいて。
…心に、軋んだ音がした。
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「…今日は、色んなことがあったなぁ…」
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道沿いにあったベンチ、
彼と座ったそれとはまた違う空席に腰掛け、空を見上げた。
彼へのファンレターを投函して
いきなり見知らぬ男性に捕まって
その人がまさかの推しで
推しの大切な人(なかま)の贈り物を探すことになって
ソフトクリームを食べて
メンバーに会って
お土産をもらって…
今でも信じられない。
思い出しても、この全てが現実だったのか、もしかしたら幻だったんじゃないかと思うほど…
人生の運を使い果たした感覚だった。
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「ねぇ見て！なにわ男子！」
「新曲がタイアップされてるんだよね！」
「またあのパーカー売れそう〜」
「買ったら一緒にライブに着てこ！…」
通りすがりの女の子が、ビルの液晶画面に映る彼らを楽しげに見て話していく。
目を向ければ、そこにはほんの少し前まで一緒にいた7人が、…あなたがいた。
「…早めに予約しなきゃ、売り切れちゃう……」
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社会人3年目。
どんなに仕事で落ち込んでも、挫けても、
家に帰ればあなたの姿を見て。聞いて。
至福のひとときは、彼が出ているテレビ番組を観ながらチューハイを飲む時間で。
家族から「そろそろ彼氏作んなさいよ」と言われてもハイハイ頷いて…自分なりに磨きながら、ただただ、あなたを追いかける。
その毎日が、バカみたいに楽しくて……
「……住む世界が違うことくらい、とっくに分かってたのに……っ…」
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“ちょっと付き合って！”
“一口ちょーだい”
“…笑った”
“これからも、なにわ男子をよろしく！”
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“Aちゃん”
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“アイドル”じゃない、
テレビやステージから見ていた彼とは違う、あなたを知ってしまったら、
こんなに…苦しくなるなんて思わなかった。
「……、遠いなぁ……」
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「遠い？…こんなに近くにおるのに？」
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ーー……時が、止まった。
背中から、両手を回されて
バッと振り返ったら
……息を切らす、あなたがいたから。
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作者名：clover
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時：2021年11月22日 14時
