韜晦 “blue” ページ47
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はぁ、と吐き出す息が白い
辺り一面雪景色、であればもう少し視覚で冬を感じられるのに
どんなに冷たい空気を纏っていても、太陽は煌々と俺を照らしている
「あーした天気になーれ」
軽快な歌とともに蹴り飛ばされた靴は、そのままストンと俺の右足の隣へ
「曇り」
「あーまじかー、まあ何でもいいんだけど」
横に並んだ男は、へらと音が出そうな笑顔で笑った
「おはよ、樹」
「今日自分で起きれた」
「凄いね」
隣同士の家で育った俺らは今日も古ぼけた団地から学校という名の檻に向かう
眠そうに気怠そうに、
その癖スキンシップ馬鹿のこいつは俺にもたれかかってくる
鳴るな、心臓
早くなるな、鼓動
ただそれだけを考えてる俺のことなんて、
…こいつは多分きっと絶対、知らない
だって俺たちはただの幼馴染で腐れ縁でお隣さんで
それ以上でも以下でもないんだから
「樹オハヨ〜」
「ねぇ髪切ったの見て見て〜」
正門をくぐれば、待ってましたと群がる女達
頭からも服からも香水の匂いしかしない、そんな能無しの奴らばかり
くっさ、
小さく吐き出した言葉は誰の耳にも届かなかったらしい
「あ、北斗今日帰り遅いから」
「…分かった」
これは樹の合図
“今日誰かしらの家に行ってくる”
さあ今日持ち帰られるのは誰だろうね？
同じ見た目に同じ匂いをさせたこいつらは、さながら陳列棚に並べられた商品のようで滑稽だった
その棚にも並べない規格外の俺の方が、本当はもっと滑稽だ
「北斗おはよ！」
自称学校１の人気者の隣を毎日歩く根暗な男、
そんな風変わりな装いの俺は割とどこでも距離を置かれていて
でも慎太郎だけは話しかけてくれた
「今日の宿題やった！？」
「写させて欲しい？」
「うん！！！！」
慎太郎だってクラスの人気者の癖に、なぜ俺なんかと話すのだろう
そう思ったことは何度もあるのに聞けない俺は、やっぱり滑稽で臆病な人間だ
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
