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side blue
「寝てる今くらい良いよね」
仕事が押してしまって急いで楽屋に来れば、中からきょもの声が聞こえた
楽屋の割り振りは俺ときょもと北斗
ということはきょもの言葉は北斗に向けてだろう
普段は自分の気持ちなんかを話さないきょもが独り言のように呟くのが珍しくて、
楽屋の外から盗み聞きをしてしまう
何だよ、こんな離れているくせに
結局こういう時に北斗の側にいるのはきょもなんじゃん
自分が右手を握りしめていたことに気付いて手を開く
じっとりと汗をかいたその手を見て、高校に通っていた夏のことを思い出した
「京もっちゃんどこ行くの？」
「トイレ」
「俺も行くー」
「北斗着いてこなくていいから」
北斗は周りがびっくりするほどきょもにべったりで、
それをどうにかしたくてわざわざ北斗に絡みに行っていた
「北斗、お前顔赤くね？」
「…今日暑いから」
「体調悪いんじゃねえ？」
「違うよ、大丈夫」
北斗の異変には気付いたものの本人もそう言ってるし、
そう思って俺はほっといたわけだけどきょもはそんなことなくて
無理矢理、北斗の腕を掴んで保健室に連れて行ってたっけ
その時北斗が少し嬉しそうな顔をしていたことを思い出す
「こうやっていつも甘えてくれればいいのに」
楽屋から聞こえるきょもの声はあの頃と何ら変わらない
気付けば楽屋の扉を開け、きょもに話しかけていた
そこには膝に北斗の頭を乗せて優しく髪を梳かすきょもがいた
んだよ、
結局あの頃のまま、北斗が頼るのはきょもなのか
それが何だか悔しくて、部屋に入るなり北斗のおでこに手を当てる
予想通りの熱さに驚きつつ瞼を閉じた北斗を見た
「…なぁきょも、悪いんだけど北斗のためにスポドリ買ってきて来んない？」
「え、樹が行けばいいじゃん」
「俺これから打ち合わせだから、頼むわ」
そう言って手を合わせれば、仕方ないなと呟いて北斗を膝から下ろした
ゆっくり壊物を扱うようなその仕草を見て、きょもの気持ちは今なお変わってないことを思い知る
もう7年も前なのに、そんな時から俺らの時間は止まったままなのかな
「なぁ、きょもって北斗のことどう思ってんの？」
「どうって何」
「俺は好きだよ」
「…そう、」
そんな会話をして帰ったあの時間を俺はきっとずっと忘れない
あの時きょもが小さく、俺もだよと呟いたことも
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
