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「北斗！」
歩き出した瞬間かけられた声
また来たよ、こいつ
「はぁ、お前ほんとどこまでついてくんだよ」
目にかかる前髪を鬱陶しそうにしながら駆けてくる男
「もう！またこんなことして、だめだって言ってるじゃん！」
黒髪を揺らして汗まで流してるのは俺の幼馴染、
という名の邪魔者
「あんた誰？」
絡ませてた腕は強制的に離され、こいつの背中に隠される
完全に敵意剥き出しで聞いてるけど、まあ誘ったの俺からだけどね
「は、お前こそ誰だよ」
突然のことに驚くジタン
そうだよな、たしかにお前誰だよってなるよな
「俺は慎太郎だよ」
そんな答え求めてないだろ、というツッコミもし飽きた
「ほら帰るよ北斗！」
また無理矢理腕を掴まれて繁華街からぐんぐんと離れて行く
「俺今日シャンパン飲みたかったのに」
「俺が飲ませてやるよ」
「あいつで遊ぼうと思ったのに」
「俺と遊べばいいじゃん」
何言っても少しも引かなくて、
抵抗虚しく腕は離されない
「飲みたいなら俺と飲めばいいし、遊びたいなら俺と遊べばいい。北斗は俺がいればいいでしょ」
なにそれ、俺の意思はどこいったの
なんてこといっても仕方ないの知ってるんだけどね
この邪魔者は俺と誰かが共にいるのを嫌がり、必ずぶっ壊しにやってきた
俺がこいつの家の隣に引っ越してきてからずっと、
もう１５年だ
「しんちゃんちにはママとパパいるのになんでほっくんちにはいないの？」
「わかんない。ママもパパもほくにはずっといないよ。ほくさびしいよ」
「じゃあしんちゃんがほっくんのかぞくになる！ほっくんのことまもる！」
脳裏を掠めた記憶に嫌気がさす
北斗は俺が守る！と言われ続けた小学生時代も、
北斗の隣は俺だけ！と言われ続けた中学時代も、
北斗がいてくれるだけでいいと言われ続けた高校時代も、
いつも直接的なようで遠回しなまま
家族、なのか何なのか
こいつの中での俺は何なのか結局わからないまま
人の心を揺さぶるのが好き？
だって、１５年も揺さぶられ続けてるんだよ俺は
いつだって結局俺を迎えに来て連れ帰ってしまうこいつに揺さぶられたまま
慎太郎、
そう呼んで腕を引くと歩みを止めて振り返る
その口にキスをした
「もう邪魔しに来ないでね」
どうせ家まで腕を離してくれないんだろうし、こいつにこのままついて行くことにしよう
fin
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
