卒業 “blue” ページ25
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side blue
「樹ー！」
「今行く！」
今日、俺は卒業する
振り返るとある灰色の建物を見つめる
この汚い校舎と今日でおさらばだと思うと、せいせいする
「あ、北斗ー！」
保健室から覗く顔を見つけ手を降ると、
急いでカーテンが閉じられた
「樹何してんだよ、早く行こうぜ」
「ジェシーがエミネム歌うってよ〜」
カラオケに行く約束をしているからか、もう既に歌い出しているジェシーと慎太郎
「先行ってて」
「え〜何でだよ〜」
「北斗に会ってくるから」
そう言えば困ったように笑って、行ってらっしゃいと微笑んだ
ガラガラ、
「北斗、いるー？」
第二保健室と書かれた扉を開ける
カーテンは閉められ電気も消された室内
4つ並んだベッドのうちの1つはカーテンが全て閉じられていた
「ほーくと」
そう言ってカーテンを開ければ、丸く固まった白い塊
「卒業式にも出てないと思ったら…ずっとここにいたの？」
「…卒業式は見てたよ」
小さな声が塊から聞こえてくる
「顔見せて」
布団を捲れば目を赤くした北斗がいた
まさか捲られると思わなかったのか、急いで手で顔を覆った
「…泣くなよ」
「泣いてない」
柔らかい黒髪を撫でれば、この3年間の思い出がフラッシュバックしてきた
「スピーチ良かったよ。髪色は問題だけど」
「晴れ舞台だからね。北斗のために1番かっこいい俺にしてきたんだから、ちゃんと見てよ」
シルバーに髪を染めたのは北斗が似合いそうと言っていたから
生徒会長のくせに何だその髪色は！と怒っていた校長の姿、一緒に見て欲しかったよ
そう言って笑えば、想像できるよと北斗も笑った
「で？なんでこんなとこいんの？」
「こんなとこもなにも、ここが俺の職場だし」
「…あ、そりゃそっか。保健のセンセーだもんね？」
白いシャツのままベッドに転がる北斗を見て、
こんな綺麗な人がここにいるなんて勿体ないと思う
「…樹、」
「ん？」
「卒業、おめでとう」
「…おめでとうって顔してないけど」
今にも泣きそうな、泣いた後の腫れた目をして
無理に作る笑顔は痛々しいのに
その顔を見ると胸が高鳴る俺はちょっとおかしいのかな
「これが精一杯の笑顔…なんだけど」
泣きたくないんだけどね、と言いながら気怠げに起き上がった北斗は
髪が乱れているからか妙に色気があった
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
