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side pink
「北斗はさ、樹のどこが好きなの?」
掴んだ手を離さないまま、人通りの少ない道を歩く
見せたいところがあるんだよねと言えば、
簡単についてくる北斗の素直さが少し心配になる
「…何処だろう」
北斗が樹に恋をしている
そう気付いたのはいつだったのか分からない
ただ気付いたら、北斗は樹を目で追っていて
ただ気付いたら、俺は北斗を目で追っていた
ブーブー
スマホがポケットの中で音を立てている
…相手はもちろん分かってるけど
「いつも隣にいてくれて、気付いたら横にいてくれて、
それでほんといつの間にか樹ばかり目に入ってたんだよ」
話すときに手に力が入るのは北斗の癖なのか、
手を握るなんて俺はしてこなかったから分からなくて
きっとそれが分かるだろう樹が羨ましくなる
「はい、着いた」
「…わぁ、綺麗」
東京湾の小さな港
真っ暗で静かな空間が俺たちを包む
「今日はいい月が出てるから。ここには俺しかいないから泣いてもいいよ」
「泣かないよ」
樹を好きだって気付いた時から、涙は流さないって決めたの
そう言って瞳を潤ませながら月を眺める北斗は綺麗だった
月が綺麗だね、
思わず出そうになった言葉は、北斗にはきっと意味が通じてしまうから飲み込むことにする
ブーブー
また飽きずにスマホから音が鳴る
「京本?携帯鳴ってるよ」
「知ってる」
「出ていいよ、俺気にしないし」
ね?と微笑まれてしまえば断りづらくて、仕方なくスマホを耳に当てた
「もしもし」
『きょも今誰といる?』
「それ知ってどうすんの?樹、」
画面に表示された“田中樹”の文字
彼女といるって言って北斗を傷付けたくせにのこのこ電話してこないでほしい
『北斗と連絡取れないんだけど』
「彼女といるなら別に取れなくてもいいでしょ」
彼女、なんて別に本気でもないくせに
北斗を見続けていたからこそ気付いたのは
樹も北斗を見ていることだった
互いに互いのことを見ているくせに、何故だか2人はすれ違って
そしてそのまま彼女、だなんて
『なんか北斗元気なかったし気になっただけだよ』
「…誰のせいだと思ってんの」
『え?』
まだ話の長くなりそうな樹との電話を切る
何であんなに見てるのに北斗のことは気付いてあげないんだよ、樹
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作者名:ぷりむら | 作成日時:2021年3月10日 15時